日本で生まれた中国人の女の子「京京」が中国語を習得する過程を綴ったものである。私も娘を授かったので、参考になるかもしれないと読んでみることにした。
子供と成人では言語習得の過程が全く異なるので、京京ちゃんの習得過程を我々に置き換えることはできないが、幼児が使う簡単な中国語表現が多数散りばめられており、且つ文法的な解説も充実しているので、ただ読み進めるだけでも結構いい勉強になるだろう。
一応文法項目別に分類されているなどテキストっぽく編纂されてはいるが、本書はあくまで勉強するつもりで読むのではなく、中国語と日本語を間を行ったり来たりする子育てエッセイとして、また言語まわりの中国文化や風習を理解するつもりで読む方が良いだろう。
例えば日中間の呼称文化の相違である。日本では30代でも「おばさん」と呼ばれることを嫌がるものだが、中国では明らかに上の世代ならば必ず“阿姨”(おばさん)と呼ぶ。“姐姐”(お姉さん)と呼んでは失礼なのだ。これは、中国の呼称が長幼の序を重んじることに起因する。“阿姨”や“姐姐”は若く見えるか否かを表すのではなく、相対的に見て上の世代なのか同世代なのかを区別するのだ。
日本でも大人を子供扱いするのは非礼に当たるが、中国における呼称は正にこれに当たる。もういい歳なのに、子供に“姐姐”などと呼ばれて喜んでいてはいけないのだ。
このような文化的な相違を感じながら、また京京ちゃんの成長を楽しみながら、気がついたらいい勉強になっていた、というのが本書の理想的な読み方なのではないだろうか。