中国語資格試験受験ロードマップ

前項を踏まえて、三大中国語検定資格試験である中検・HSK・TECCの、受験の順番とタイミングについて考えてみよう。

入門・初級レベル

初級レベルでは、基礎項目が学習の中心となるので、試験についても、この項目を重点的に問う初級向けの試験を受験するのがよい。この要求を満たしているのが中検とHSK基礎だが、HSK基礎は知名度が低く、また試験会場も少ないので、やはり中検を選択するのが無難であろう。

というわけで、中国語資格試験デビューは中検で飾ることになる。目標は初級レベルの修了を意味する3級だ。はじめから3級を狙ってもよいが、目標としては少し遠くなるので、段階を踏みたい学習者はひとまず4級を目標とするのがよい。

入門修了レベルを問う準4級試験もあるが、特に受験する理由は見当たらない。もちろん、一歩一歩上り詰めて行きたいのならば受験すればよいだけの話であるが。

4級試験と言えど、必要学習時間として120~200時間が目安とされる試験である。出題範囲は中国語の基礎項目、これなくして中国語は考えられない、ごく基本的な項目である。

3級試験は学習時間として200~300時間が目安となり、そのレベルは一般大学の第二外国語における第二年度履修程度とされる。学習語彙数は1,000~2,000語で、中国語における一般的事項を一通りマスターしていることを要求される。

このレベルに到達すれば、ごく基本的な中国語業務を遂行することもできる。就職転職において資格としてアピールすることもできるレベルなので、中国語を学習する以上は、少なくともこのレベルには到達しておきたい。

中国語習得の進捗度から言えば、3級の合格は初級レベルを修了していることを意味する。初級と中級では学習項目の重点が変わるので、学習方法を変えていく必要に迫られる。端的に言えば、精読精聴中心の質的学習から、多読多聴の量的学習へと変化を遂げる段階に入ったことを知らせてくれるわけだ。

中級レベル

3級に合格したら、あなたはすでに中級者である。資格試験受験計画もここで変化が訪れる。これまでは中検一辺倒であったが、ここでは中検の次の級である2級はひとまず置いておいて、TECCに受験対象を移行する。中検2級については、TECC受験の過程の中で、2級を狙えるレベルになったら受験すればよい。

中級レベルにおいて受験対象となるTECCは、まさに中級者のために用意された試験である。長期戦となる中国語の中級レベルにおいて、なかなか中国語の上達を実感できない中で、その進歩を数値として評価してくれるTECCは、さまよえる中級者にとって、灯台的な役割を果たしてくれるであろう。

TECCの最終目標はスコア900である。TECCは900を超えるとスコアの精度が落ちるので、900をもって卒業とする。また、800を超えたらそろそろ中検準1級も視野に入ってくるので、900突破と平行して準1級を意識した学習を行うのがセオリーであろう。

TECC900と中検準1級をクリアしたら、あなたは名実共に中国語上級者である。中国語に対するこだわりがなければ、ここでひとまず上がりとしてよいだろう。資格としての訴求力はすでに十分、実務的にも、このレベルなら即戦力として活躍することができる。

上級レベル

より上を目指したい者は、中検準1級に合格したら、次はHSKである。いきなり高等を受けてもよいが、HSKスタイルに慣れるため、また、一応資格アピールとして、HSK初中等の最上級である8級を取得するため、初中等を受験しておいてもよい。中検準1級所持者ならば実力的には8級に到達していると思われるが、何分試験形態がかなり異なるので、準備なしで受験すると、8級に届かないケースも十分考えられる。

よって、初中等試験と言えど、準備を怠ることは禁物である。模擬問題などでHSKの試験形態に慣れておく必要があるだろう。特に“听力部分”(リスニングパート)がネックになることが予想される。HSK8級レベルのリスニングは中検準1級より上であると考えておいた方が無難なので、リスニング対策をしっかりと行っておくべきであろう。

上級者向け試験であるHSK高等試験は、スピーキングとライティングも要求される総合試験である。試験時間も長く、かなりのストレスがかかる試験でもある。総合的で且つ高度な中国語力を要求される試験であるので、上級者にとっては、よき目標となるのではないかと思う。

なお、中検1級については、事実上通訳試験の性質も兼ね合わせており、通訳実務者、少なくとも通訳訓練を受けた者でなければ合格するのは難しい。

故に、その道を目指さないのならば、あえて受験する必要はないと考えてよいだろう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加