中検のススメ
中国語を勉強する理由は人それぞれである。単なる趣味で学んでいる人もいれば、中国に派遣されることになったビジネスパーソンもいる。中国駐在となった夫について中国に行ったご婦人というケースもあるだろう。
学生や若き社会人の場合は、就職や転職の武器として中国語を学習しているケースが多い。ビジネスパートナーとして、また巨大市場として、中国市場の重要性が日々高まっている日本において、ビジネスユースとしての中国語需要も、日々高まる一方である。
中国語能力が経済的価値を持つ以上、社会はそれを客観的に測る基準を欲している。それがいわゆる能力検定資格試験であり、英語の英検に相当するものとして、中国語検定こと中検が持つ意義である。
中検以外にも、中国語能力検定試験は存在しているが、その歴史と社会的認知度から考えた場合、日本における中検の存在感は圧倒的なものがある。中国政府公認の中国語能力検定であるHSK(漢語水平考試)は中国語教育界においては有名だが、社会的には、その知名度は中検に遠く及ばない。
率直な話、中検は英検の知名度と社会的認知度に乗っかっているところもある。英検が国家資格(現在は非国家資格)であったのに対し、中検はあくまで民間の実施運営であったのだが、社会的には英検に相当する中国語能力検定試験であると考えられてきたからだ。
それゆえ、スコア制を取るTOEICが普及した際、中検にも「なぜスコア制を採用しないのか」という中国語学習者世論の圧力がかかったが、結果的にはスコア制は採用されず、級別検定のまま現在に至っている。
そもそも、スコア制と級別制はそれぞれに長所と短所があり、どちらか一方が優れている、という訳ではない。ここでその長所と短所について詳しく論じることはしないが、中検の採用している級別評価は、段階的に学習を進める上での良き指標となる。資格取得そのものを目的としない受験者がいるのはこのためであろう。初級なら初級、中級なら中級で、そのレベルで学習すべき項目を正しく身につけているのか否かを測るためのリトマス紙となるからだ。
この意味において、中検はあらゆる中国語学習者にとって有意義な検定試験である。特に4級と3級は、基礎項目を正しく身につけているかどうかを確認する上で、非常に有用な存在であるといって良いだろう。
また、2級は長期戦となる中国語の中級レベルの半ばに位置する試験で、「さまよえる中級」と呼ばれる中級学習者にとって、一つの指標となる試験となる。そしてそのゴールが準1級である。上級者の証となるこの試験は、中検の事実上のゴールとなる。
なにせ、最上級である1級試験は通訳試験も課されるなど、事実上中国語通訳翻訳検定試験の性格も兼ねているため、中国語のプロを目指す者以外にはあまり縁のない試験であるからだ。もちろん、その分資格取得から得られる達成感は計り知れないものがあるが。
いずれにせよ、中検は各級ともそれぞれに大きな意義があるポイントに位置しており、中国語学習を進める上での羅針盤となる心強い存在である。且つ資格としての社会的認知度も高く、すべての中国語学習者にとって有意義な存在であろう。
ゆえに、中検を勧めるのだ。