日本人が苦手とする中国語の発音の秘密
発音についてイチから一つずつ取り上げていったらかなり時間を食ってしまうので、この集中講座では日本人が苦手とする発音に集中して、その攻略法と練習法を紹介する。体系的なものは既に優れたテキストが存在するので、そちらを確認してほしい。例えば、このようなテキストがオススメだ。
「いくつかの」発音を攻略せよ
そもそも、日本人の苦手とする発音とは何なんだろうか。答えは簡単だ。日本語にない発音である。
日本人が英語の発音が下手だとか、中国語の発音が難しい、と言われるのは、日本語の発音構造が多くの諸外国の言語のそれと比べ乖離が大きいためである。加えて日本語の発音は子音母音共に比較的少ないので、外国語を学ぶ際、多くの「日本語にない音」に遭遇する。日本人が発音下手とされる原因はここにあるのだ。
中国語は子音母音共に日本語より種類が多く、且つ声調という独特のトーンが存在しているので、一般に発音が難しい言語とされている。日本人が中国語の発音に苦戦するのも無理はないのかもしれない。
しかしながら、よくよく分析してみれば、発音が難しいというのはあくまで相対的な話でしかない。類似のものを含めるのなら、実際に日本語の中にまったく存在しない音はそれほど多くはないのだ。
そのいくつかの音さえ押さえてしまえばこちらのものである。この集中講座では、そんな「いくつかの」発音について徹底的に分析してみたいと思う。
「日本語にない音」と「日本人が区別しない音」
上述で「日本人の苦手とする発音は日本語にない発音」としたが、実際にはこのような「一刀両断」な分類には少し無理がある。もう少し細かく分けると、次のような形になる。
- 日本語に同様のものが存在する発音
- 日本語に類似のものが存在し、その発音でも基本的に大きな問題はない発音
- 日本語に存在するが、日本人は区別しない発音
- 日本語にない発音
細かいことを言えば、この4つのさらに中間に位置するような音、この分類法では適切に分類できない音などもあるが、実践上はそこまで細かく分けて考える必要はないので、ざっくりとこの4つに分類して考えていきたいと思う。
6つの壁
一般に日本人が苦手とする発音は上記「3」と「4」に分類されるものだ。具体的に提示すると、母音「e」、母音「u,ü」、そり舌音「ch,zh,sh,r」(特に「r」)、「n」と「ng」の区別、有気音と無気音、第二声、となる。なんだかんだ言って難しいのはこれぐらいなものだ。
なぜ第三声でなくて第二声なんだ、という声が聞こえてくるのだが、第三声なんて実は簡単なのだ。低く抑えればそれで良いのだから。一方の第二声は音程を上げなければならない。これは意識して発音する場合は簡単なのだが、日常の無意識の中で二声の音をしっかりと上げ切るのは案外難しい。日本人の中国語会話が相対的に見て(聴いて?)抑揚に欠けるのは、多くの場合第二声がネックになっている。十分に上がってないのだ。
有気音と無気音は難しくはないのだが、日本語にない概念なので地雷になることがままある。「n」と「ng」の区別は聴き分けが難しい。
そり舌音は難関として名を馳せるが、舌の動きさえ分かれば結構楽なものである。母音「e」は音の位置を押さえればOK。母音「u」は日本語の「ウ」とは似て異なる音、母音「ü」は開き直れば簡単だが、質を追求するならちょっと訓練が必要になる。
次項より、上記に列挙した発音のコツと練習方法について、1つずつ解説してみたいと思う。