アクセント ~ 音の強弱

声調(トーン)言語の中国語にもアクセント(音の強弱)が存在することはあまり意識されていない。

難しいものではないのだが、これを押さえると俄然ネイティブスピーカーの発音に近づく。一方でこの点がおろそかでも通じることは通じるため、学習者本人がこの問題に気づいていないケースも少なくないようだ。

リスニングをしっかりやっていれば無意識のうちにマスターできるものもあるが、頭で理解しておいた方が確実且つ早いので、先に理論を学んでおく方が良いだろう。

文の中の強弱

これは中国語に限らず日本語も(そしておそらく他の言語も)同様であり、いちいち言及する必要はないのかもしれないが、文の中で重要になる部分や強調したい部分は強く発音される。

例えば、「是」構文においては目的語の部分が強く読まれる。

"他是中国人。"

これは、「是」構文は主語を説明する構文であり、主語がいかなるものなのか、というところが重要になるので、そのいかなるものなのかを表す目的語部分が強く読まれるのだ。これと同じく動詞の後に置かれる程度補語や疑問文の中の疑問詞など、文においてそれぞれ重要になる部分が強く読まれる。

また、強く読む部分を変えることで、その文の持つニュアンスを変えることもできる。例えば、"我知道你会下棋。"(私はあなたが将棋に強いことを知っています。)という文がある。この文を構成するのは“我”“知道”“你”“会”“下棋"の5つだが、それぞれどれを強く読むかによって、文の持つニュアンスが次のように変化する。

  • 知道你会下棋。”(他の人はあなたが将棋に強いことを知らない。)
  • “我知道你会下棋。”(私に隠そうとしてもムダ。)
  • “我知道会下棋。”(他の人が将棋に強いかどうかは知らないけど。)
  • “我知道你下棋。”(何で将棋は下手なんて言うの?)
  • “我知道你会下棋。”(他のことは上手どうか知らないけど。)

単語の中の強弱

中国語では声調が重視されるのでどうしても音の高さに集中力が行ってしまうものだが、現代中国語で多数を占める、2字以上の漢字で構成される単語には、漢字間(音節間)での音の強弱なるものが存在している。

これも日本語に存在する概念なのでわかりやすいと思う。例えば「口(くち)」「耳(みみ)」のように、アクセントを間違えても意味は変わらないが、非常に不自然に聞こえる。これは中国語も同じなのだ。

ただし、中国語の単語のアクセントは日本語のそれほど複雑ではない。漢字の文字数(音節数)ごとに単語のアクセントのパターンを見ていきたいと思う。なお、ここでは軽声を加え、音の強弱を「強・中・弱」の3段階で表す。

2文字(2音節)

漢字二文字で構成される単語のアクセントは、主に次の二通りに分類される。

(1)中強

1音節目を弱めに、2音節目を強めに読む。二音節の単語は基本的にこのアクセントで読まれる。1音節目を強く読む単語もあるが少数派だ。日本人はおしなべて2音節目を強く読むのが苦手なので、注意しておくと良いだろう。

例:汽车("车"を強く読む。)

(2)強弱

2音節目が軽声の場合は1音節目を強く読み、2音節目は軽声で軽く発声する。

例:桌子("桌"を強く読む。)

ちなみに、日本語の「あめ」や「はし」と同じく、アクセントのパターンによって語義が変わってくるものもある。例えば"东西"。(1)で読むと「東西」の意に、(2)で読むと「物」の意味になる。

3文字(3音節)

(1)中弱強

3音節では最も一般的なアクセントのパターンである。

例:差不多("不"は弱く、"多"は強く読む。)

なお、1音節目が第一声か第二声で、2音節目が第二声の場合、早口で発音すると2音節目の第二声が一音節目に引っ張られて第一声に近い音になる。これと同様に、1音節目が第一声か第二声で、2音節目が軽声の場合、その軽声の音の高さもあまり低くならない。

例:三文鱼(早口で言うと"文"は第一声っぽい音になる。)

これは意識しなくても早口で読むと自然にそうなる。それは中国人にとっても同じことだ。

(2)中強弱

例:没意思("意"を強く読む。)

(3)強弱弱

例:听起来("起来"は弱く読む。)

4音節の場合も3音節の場合と同じく2音節目を弱く読むケースが多いようだ。また、3音節の(1)と同様に、同条件の元では2音節目が第一声に近い音で発音される。

1文字(1音節)

1音節は声調なのではと言われそうだが、声調の中にもアクセントに近い音の強弱が存在するので、ここでまとめて扱う。

第一声と第二声は音の後半の方が強くなるところに大きな特徴がある。日本人の発音はエネルギーに欠けるのかどうしても尻すぼみになってしまうので、意識して発音した方がよりネイティブスピーカーに近い発音になる。また、後半を強く読むので、比較的長い音になる。

一方の第三声と第四声は音の始めを強く読み、残りは消えていくように発音するので、比較的短い音になる。日本人にとってはこちらの方がラクだろう。

強い音と弱い音

これまで強い音、弱い音、と言ってきたが、そもそも強い音とはどんな音なのだろうか。

それは時として音量が大きいことであり、また音を引っ張って長く発音することだったりするが、基本的に中国語には声調という要素があるので、それを極端に強調してやれば良いのだ。

第一声はより高い音で、第二声は思いきり高くまで音を上げ、第三声はより低く、そして音を長めにして、第四声はより高いところから低いところまで、また音も長めに発音する。

これに比べ弱い音は至極簡単だ。軽声に近づけてやればよいのだ。

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