「発音よければ半ばよし」という格言があるように、中国語の最大の関門はやはり発音である。最大の難関が発音という始めの第一歩に待ち構えているのが、中国語学習の最たる特徴であり、難しいところでもある。
しかしながら、逆に考えれば、発音さえクリアしてしまえば後は楽なのが中国語なのだ。そんな訳で、ここでは最大の難関を出来るだけ早く突破するためのコツについてまとめてみたいと思う。
カラダで覚える
語学は「学」とはいうものの、技能的要素が強く、学問というよりも書道やピアノのような習い事に近い。特に発音はそれが顕著で、反射能力を問うスポーツと同等と考えて良い。
故に、発音はカラダに覚えさせるものである。その発音の発声方法を理解したら、後はカラダに覚えこませるのだ。ここで言うカラダとは、主に唇と舌を中心とした「口腔」と「のど」及び「下顎」である。スポーツと同様に徹底的な反復練習こそが発音速習の王道なのだ。
この部分は手を抜いてはならない。基礎トレーニングをサボるスポーツ選手が大成することはないのと同様に、発音の基礎トレーニングをサボる中国語学習者が大成することもあり得ないのだ。
大げさに
日本語は唇や舌の動きが小さく、また、のどへの依存も小さい言語である。このため、日本語の発声感覚で中国語を発声すると、はっきりしない、聞き取りにくい発音になってしまう。
故に、トレーニングの段階では、動作は大げさにした方が良い。中国人だってそんなに口を動かさない、なんて考えてはいけない。日本語ではあまり使わないクチ周りの筋力を鍛えるには、大げさにする方が効果的なのだ。
また、実際に会話をする場合、意識は会話の組み立てに集中するのものなので、発音はどうしてもなおざりになり、日本語のクセが出やすくなる。これを緩和するためにも、トレーニングの段階では大げさに動かす方が良いのだ。
また、口の動きのみならず、声調もそれぞれの特徴を強調して練習した方が良い。第一声は限りなく高く、第二声は発声の後半部分に全力を込めて、第三声は重しを乗せたような低音で、第四声は高所から飛び降りるイメージで発声するのである。
大声で
動作や音程を強調するだけではなく、音量自体も大きくする方が良い。大声でトレーニングする方が動作や音程も強調しやすいのだ。また、この方が自分の発音の問題点も発見しやすくなる。
そもそも、中国人の発声音量は日本人のそれより大きいのだから、中国語で会話する場合は意識して大きな声で話した方がよいのだ。
日本語で使わない部分の筋肉を鍛える
「大げさに」の段でも言及しているが、中国語は日本語で使わない部分の筋肉も使うので、この部分は意識して鍛えるのが良い。個人差はあるかもしれないが、発音トレーニング開始初期は、口周りの特定の部位に疲労感を覚えるものである。訓練を重ねるうちにこのような疲労感を感じることはなくなっていくが、初期ではこの疲労感を覚える場所を意識してトレーニングするといいだろう。
逆に、初期段階でも疲労感を覚えないようであれば、動きが小さすぎるか、あるいは動きが間違っている可能性も考えられる。この場合、今一度発音を確認する方が良いだろう。
日本人に教えてもらって中国人に直してもらう
語学は独学も可能だが、発音については教師について学んだ方が習得が早く、また下手な癖が付きにくい。だからと言って中国語教師ならば誰でも良い、という訳ではないのだが。
教師は出来る限り発音教育を得意としている者を選ぶのが良い。出来れば、同じく日本人として中国語の発音を学んだ経験のある日本人教師に学び、中国語を母語とする中国人教師に矯正してもらうのが理想的だ。
中国語を母語とする中国人には、外国語として中国語の発音を学んだ経験がない。母語の習得と外国語の習得は全く異なるものなので、この経験の欠落はどうしようもないのだ。もちろん、日本人向けの中国語発音教育に精通した中国人教師ならば話は別だが、この点においては、多くの場合、日本人教師の方が中国人教師より優れていると考えて良い。
一方で発音の矯正となると、中国語を母語とする中国人教師の方が圧倒的優位となる。日本語を母語とする日本人教師では、日本語の影響を受けた発音の癖を完全に聞き分けるのは難しいのだ。
難しいのは、中国人教師ならば誰でも良い、という訳ではないところだろう。普通語との発音差が大きい地域出身の教師は、この優位性が大きく損なわれてしまう。もっとも、発音については天分によるところも大きいので、単純に出身地だけで判断することもできない。
では、如何にして発音教育を得意とする教師を探すのか、となるのだが、この点については正直なところ「コレだ」という決め手に欠けるのが現実である。いずれはこの最後のピースを埋めたいと願っているのだが………