時間・資金的要素を織り込んだ中国語学習プランニング

「中国語習得フィージビリティスタディ」で学習プランを設計するための要素の一つとして「環境」を挙げた。

環境と言ってももちろん自然環境ではなく、学習者が身を置く社会環境のことを指す。例えば社会人、学生、主婦のような社会的属性によって、学習環境は大きく異なってくる。また、同じ社会人でも、その人を取り巻く環境は同一ではない。就職したばかりの新人かそれとも30も半ばの中堅か、結婚しているか否か、子供がいるか否か、外回りかそれとも内勤か、通勤時間はどのくらいで、通勤手段は何なのかetc...

これらの要素を考慮せずして学習プランの構築は考えられない。本項ではこの点を織り込んだ学習プランニングについてまとめてみたいと思う。

時間的制約

学習可能時間は学習者の学習プランニングに大きな制約を与える。たとえ本人が如何にやる気に燃えていたとしても、学習時間が確保できなければ、習得も何もないのだ。社会人、学生、主婦......立場環境こそ異なれ客観的に同じなのは、与えられた時間は1日24時間のみ、という厳粛な事実である。この24時間の中からどれだけの学習時間を確保できるのか。これが学習プラン構築の大前提となる。

もちろん、時間は多いに越したことはない。もっとも、1日10時間確保したからといって、10時間質の高い学習状態を維持できるかどうか、というのはまた別の話になるのだが。

また、確保した時間にも質的な差異が存在する。例えば、自宅で机の前に座ることができる時間と、通勤通学電車の中で確保した時間では、学習方法に対する制約という点で質的に大きな差が存在する。自宅での学習だったら音読やディクテーションも可能だが、それを電車の中で実践するのは難しい。少なくとも、電車の中で大声を張り上げることはできないだろう。

このように、同じ「時間」でも、その自由度には大きな差がある。自由度の高い時間をどれだけ確保できるのか、また、自由度の低い時間における制約の度合いはどれぐらいのものなのか、より具体的に言えば、自宅で学習できる時間はどれだけなのか、通勤通学の中では、車、徒歩での移動時間は......等々、確保できる時間の質を吟味することも不可欠となる。

逆境を逆手に

時間の量は多ければ多いほど良く、また自由度は高ければ高いほど、より自由にプランニングが可能であることは言うまでもないが、時間が少ないこと、自由度が低いことは何もマイナスの効果ばかりもたらす訳ではない。

一般に、学習時間は長ければ長いほど、集中力を持続することが難しくなる。1時間程度ならともかく、2時間、3時間と集中力を維持することができる人はそういるものではない。逆に、5分程度なら、集中力の維持は比較的容易となる。5分だって12コマ寄せ集めれば1時間になるのだからバカにはできない。塵も積もれば何とやら、である。

また、自由度についても、制約のある空間の方がかえって集中しやすいという傾向もある。自宅での学習は自由度が高い分、誘惑も多い。本棚には雑誌やマンガなどがこちらを見つめているし、振り向けばテレビとゲーム機が手を振っている。机の上にはパソコンがあり、インターネットに繋がっている......とにかく誘惑が多いのだ。

逆に、例えば電車の中では、これらの誘惑は限られたものとなる。かばんの中にマンガやゲーム機を入れなければ良いのだ。勉強する以外にやることがなければ、学習効率は嫌でも上がる。敢えて図書館や公園に行って勉強する人がいるのもこのためである。誘惑から離れたり、勉学に励む周囲から刺激を受けるためだろう。もっとも、最近はスマホという、携帯電話にパソコンがくっついているようなものが出現しているので、自宅を離れても誘惑に取り巻かれるようになりつつあるのだが。

時間についても、限られている分、最も重要なもの、最も効果の期待できるものを選択して集中的に学習を進めることになり、結果として時間当たりの学習効率が高くなるという利点もある。

資金的制約

空間時間的な制約の他、経済面も環境に分類して良いだろう。中国語教室へ通う場合はもちろんのこと、独学の場合でも、テキストや辞書など、語学は何かと金がかかるものだ。最近はインターネットの普及により安く済ませることもできるようになっているが、ある程度において価格と機能・サービスが正比例するのは言うまでもない。よって、一般に投入できる資金が大きければ大きいほど学習効率を高めるのも容易になる。

また、自腹を切って購入すること自体、モチベーションを高める効果を発揮する。特に高額のサービスや書籍についてはその効果が大きく、そのような心理的効果が学習効率に与える影響も無視できない。

大多数の学習者にとって、資金は限られたものである。そして限られた資金であるからこそ、その効率的な資金配分が求められるのだ。重要な部分はより厚く、優先的に資金を分配し、そうでない部分は極力抑える。インターネットなどでは無料で利用できるサービスも多々あるので、それらを利用することで、資本効果を最大限にしていくのだ。

もちろん、サービスにせよ書籍にせよ、高ければ高いほど良い、という訳ではなく、またたくさん金をつぎ込んだから上達が早くなる、とも限らない。特に学習者の心理に与える影響は、その学習者の価値観や経済状態によって大きく異なる。例えば同じ1万円でも、自由になる金が月10万の人と5000円の人では、心理的効果には大きな差が存在することは容易に想像できる。

総じて言えば、極端に資金力のあるケースと、その正反対にある場合を除いて、資金的な制約の比重は時間的制約ほど大きくはならないが、資金分配の最適化は学習効率の向上に大きな効果を発揮するので、その意味では決して無視できない要素となる。

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