中国語では「主語」「述語」「目的語」の順番で並べるのでよく英語に似ていると言われますが、似ているのはこれぐらいです。
例えば修飾詞が長い場合、英語では関係詞を使って後ろに持っていきますが、中国語ではどんなに長くても日本語のように修飾される単語の前に置きます。
中国語は「孤立語」(※注1)に分類される言語であるため、「膠着語」(※注2)に分類される日本語とは文法的に大きく異なりますが、このあたりは日本人にとって学びやすい点だと思います。
また、中国語は漢字を使用しているため、字を見れば大体の意味が推測できるという利点もあります。
漢字文化圏の外にある外国人が中国語を学習する場合、漢字は難関の一つです。このことは身近でも感じることができます。在日外国人で日本語をかなり上手に使う人でも、漢字はさっぱり分からないということはよくあります。
一方で、日本人学習者にとって漢字は母語の一部となっていますので、多少字体が変わっていても習得するのは簡単です。
英語に例えるなら語源を完全にマスターしているようなものです。しかも漢字は表意文字なので、中国語を始める段階で既に文字をほぼ完全に理解しているのは、圧倒的に有利なのです。
難しいといわれる中国語の語音についてですが、中国語の語音は1字=1音節で、一つの音節は「子音+母音(+尾音)」から構成されています。
英語のように複数の子音が連続したり、前の単語の語尾と、後ろの単語の語頭が連結して発音されることもありませんので、日本人にはなじみやすいと思います。
また、歴史的に日本は中国から文化を輸入していますので、中国の古典などにもある程度精通しています。この点も大きな利点となっています。
このように言語的特質から考えてくると、中国語は英語より習得しやすいのではないのか、と思われるのではないでしょうか。
中国語学習の革命期
しかしながら、言語の習得については、ただ単に言語の特性や親近性だけで判断するのは不十分です。学習者の具体的な言語学習環境も合わせて考慮する必要があります。
英語は第一外国語として義務教育の中で教えられます。そのため、程度の差はあれ誰でも多少は知っています。
また、英語は社会的な需要が大きいため、英語教材はそれこそ山のように販売されています。中国語及びその他の言語の教材を全て集めても英語教材の10%にも満たないのではないでしょうか。
学習教材のほかにも、英字紙や英語によるニュース、洋画などが豊富にあり、英語に接しやすい環境にあります。
これに加え近年の外来語はそのほとんどが日本語に訳されることなく、そのままカタカナで使用されます。
そのほとんどが英語に由来する語彙なので、比較的新しい言葉や概念についての英単語を知らない間に身につけることができてしまいます。
一方、中国語学習教材は英語ほど豊富ではありません。特に中級以上の教材は数えるほどしかなく、掃いて捨てるほどある英語教材とは雲泥の差があります。中国語の新聞や中国語のニュースソースも英語に比べれば微々たるものです。
しかしながら、これら学習環境は年を追うごとに、急速に改善されています。
私が中国語を始めたころは中級以上の教材は皆無に等しかったのですが、最近はポツポツと見かけるようになりました。
また、現在はCS放送等で中国語放送を視聴できるようになっていますし、大型のビデオレンタルショップでは中国映画のDVDを見かけるようにもなりました。
何より大きな変化はインターネットの普及でしょうか。PCの多言語対応が進んだのに加えブロードバンドの普及も相まって、大量の良質な中国語に触れることができるようになりました。
チャットを利用すればおしゃべりも可能です。数年前には思いもよらなかった学習法が国内でも簡単にできるようになっています。
このほか在日中国人の数も増えてきているので、その気になれば中国人の友人を作ることも難しいことではなくなっています。
現在の環境下であれば、以前は留学でもしないと到達できなかったレベルでも十分達成できるようになっています。まさに中国語学習の革命期にあると言ってよいでしょう。
貧しい環境下で苦労していた(テープレコーダーがなかった時代に中国語を学習した先代には遠く及びませんが)私から見れば、うらやましいかぎりです。