ボキャビルは続く
中国語を続ける以上、広義の意味での語彙学習はほぼ永久に続きます。レベルの上昇に応じてボキャビルの重点項目と意義は変わってきますが、初級者には初級ボキャビルが、中級者には中級ボキャビルが、そして上級者には上級ボキャビルがそれぞれ待ち構えている訳です。
ボキャビルはこのような性質のものなのですから、過度に意気込まず、気長に、また気楽に取り組んだ方がいいかもしれませんね。
取りあえず、ここでは初級ボキャビルについて考えていくことになります。
初級ボキャビルは「耳」から
「中国語単語学習」の項でもお話しましたが、中国語、特に初級レベルでは中国語の単語を「耳」で拾えるようにすることがボキャビルの最重要点です。
極力文字には頼らず、耳だけで勝負するつもりでボキャビルを進めてください。
具体的な方法については「中国語文脈単語学習法」と「中国語語彙学習法実践編」で解説しているので別途ご参照ください。
単語学習書は必要か
ここで今一度、市販の「単語学習書」について考えておきたいと思います。
「語学はボキャビルが基本」であることは広く認知されていることなので、本屋に行くと中国語単語学習用の書籍を漁る学習者の姿を見かけることも少なくありません。
しかしながら、特に初級者にとってこれら単語学習用の教材を使った単語学習は得策ではないと私は考えています。
市販の単語学習教材は頻度の高い単語に例文を付けて、項目別もしくは頻出度別に分類しているものがほとんどです。
このような形態の学習法は単語のイメージ化(※参照:「避けられない記憶の原理」)が難しく、忘れやすいという欠点がある他、往々にして学習対象の単語のウェイトが名詞に置かれているものも多く、「アウトプット型」を指向すべきである中国語語彙学習の理想的形態からの乖離が大きいのです。
「句」への発展
「アウトプット型」とか何とかちょっと難しくなってきましたので続けて解説します。
一般に初級レベルのボキャビルは名詞に流れやすいのですが、私は名詞、特に生活に身近な物品などを表す名詞は後回しでよいと考えています。
確かに「テレビ」「冷蔵庫」「車」等はすべて重要な単語なのですが、逆に頻出する単語である分接触する機会が多く、無理して覚えなくても学習を重ねるうちに、特に「アウトプット型」の学習を続けていると自然に覚えてしまうものも多いのです。
また名詞は往々にして「発展」がありません。ここで言う「発展」とは単語の「句」への拡張を意味します。
ちょっとわかりにくいので例を出してみましょう。例えば「冷蔵庫」。冷蔵庫は冷蔵庫であり、それ以外の何物でもありません。そこから発展しないのです。
一方、動詞は発展性があります。例えば「行く」。「行く」ときたらすぐに連想されるのが「どこへ(に)」。これを補完すると「どこどこへ行く。」となり、句へと発展します。
「アウトプット型」単語学習
動詞は句の中核となる要素です。特に中国語の基本文型は「S+V+O」であるため、動詞の前が名詞、動詞の後ろが目的語となり、句を構成する上でより重要な役割を果たします。
例を出してみましょう。句は次の順で作成すると簡単に作成することができます。
1.买 「買う」(動詞)
↓
何を買う?本!
↓
2.买书 「本を買う」(動詞の後ろに目的語を追加)
↓
誰が?私!
↓
3.我买书 「私が本を買う」(動詞の前に主語を追加)
この他の要素も基本的にこんな感じで追加していけばいいだけです。何かを表現したいとき、まずは動詞を思い浮かべればいいのです。
動詞は句の中核
日本人の中国語単語学習においてはアウトプット指向が重要になる(※参照:「中国語単語学習へのカスタマイズ」)ことを考えると、初期のボキャビルではやはり動詞を重視した方がより効果的であると考えられます。
一方、名詞はアウトプット学習の際
「あれは中国語で何というんだ?」
という疑問と共に覚えていけばいいわけです。この方が実践的で、より記憶にも残りやすくなります。
アウトプットのきっかけを作る学習法については会話学習編でも言及していますので、合わせてご参照ください。
まとめ
初級段階における単語学習法についてまとめておきたいと思います。
1.耳から
簡体字に慣れると、字から日本語の意味を推測するのは比較的容易です。一方で音は日本語の音と相違が大きいので、中国語では「聞いてわかる」を以って単語を覚えたと見なすようにしてください。
2.テキスト中心
テキストで出現した単語を丁寧に覚えていってください。
3.動詞中心
特に動詞をしっかりとマスターしてください。アウトプットの核となりますから重要です。
4.アウトプット指向
覚えた動詞を使って積極的に句を作り、発声していってください。そこで調べた名詞は別途覚えていきましょう。
初級段階のボキャビルについて大まかに言えばこんな感じとなります。