中国は「文字」の国です。そのためか重文主義的なところがあり、ライティングにおいても修辞技法を重視する傾向があります。
そこで、中国語におけるライティングの基本事項について項目別に考えてみたいと思います。
簡潔に
これはどの言語でもそうなのでしょうが、特に中国語では簡潔な表現を好む傾向が顕著です。
例えば、本来なら二字熟語二つ、計四文字の言葉を合体させ、漢字二文字の熟語としてしまう荒業も頻繁に行われます。これは別段まれな現象ではなく、現在二字熟語として確定している語彙の中にも元を辿れば二つの二字熟語に分けることができるものもたくさんあります。
こういうのは説明するより例を挙げた方がわかりやすいですね。例えば……
「厭悪」+「痛恨」=「厭恨」
「爽快」+「利落」=「爽利」
ちなみにこの現象には一定の法則があり、結合する二つの語彙の中で、その語彙の語義の中心となる漢字を選んで結合させます。
「厭恨」を例に考えると、「厭悪」の中心語である「厭」と「痛恨」の中心語である「恨」を結合させます。決して「悪痛」とはなりません。
このようにすでに二字熟語として確定している語彙以外にも、語呂合わせや韻を踏むため等の修辞上の理由で二つの二字熟語を結合させることはよく行われます。これを自分でできるようになったら本物の中国語が身についてきたと考えてもよいのではないでしょうか。
成語、ことわざ、詩などの引用
中国語では成語や俗語、ことわざなどが頻繁に使用されます。書き言葉はこの傾向が特に顕著で、成語が出てこない文章なんて考えられないぐらい浸透しています。
成語やことわざなどは故事に由来するものも多く、それ一言で百言を尽くすことができます。このため一つの段落の最後にその段落のまとめとして成語や俗語、ことわざを用いることで、その文章に説得力を持たせることができます。
また、成語は形容的な形で使用することも多く、修辞上欠かせない要素にもなっています。
使いすぎると気取った文章になってしまうので注意が必要ですが、適度に成語やことわざを用いることで文章にアクセントが生まれ、また説得力も生まれます。
また、歴史が長く故事も豊富、且つこれらを尊重する気風がありますので、故事に由来する表現を的確に使用することで大きな効果を得ることができます。
このほか、唐詩などの詩歌を文章の中に読み込むのも有効です。唐詩や宋詞の中の有名なくだりをベースに一部の文字を置き換えて応用することができるようになれば一先ずは一人前といっていいのかもしれません。
より優れた中国語のライティング力を身につけるにはこれらの要素を避けて通ることはできないと思います。
タイトルと最初と最後の段落の関連性
文章の書き出しとまとめ、及びタイトルはしっかりと関連性を持たせてください。これは何も中国語のライティングに限ったものではありませんが。
まとめ
一般に日本人の中国語ライティング力は他の国の人に比べ優れていると言われています。これはおそらく漢字、書き言葉及び中国の古典に対する知識等が他の国の人に比べ豊富であるためでしょう。
会話が下手なのに書かせてみるとまともな文章を書いてくるので、ライティング力が優れているように感じるだけという可能性もありますが(笑)。
ともあれ中国語の醍醐味はライティングにあります。
造語力に富む言語なので簡単に新語を作ることができますし、同音異義語が多いことを逆手にとった、既存の熟語や成語の一部を置き換える修辞法も楽しめます。
また、伝統的に「文」を重んじる国なので、優れた文章を書くことができる人は一目置かれるようにもなります。
中国語のライティングを楽しむことができるレベルを目指してがんばってください。