中国語ライティング学習を始める前に

文章をつくるというのは大変難しい行為です。母語でも作文は苦手という人はたくさんいます。それを中国語でするのですから、その困難は言うまでもありません。

目立つ不自然な表現

文章は会話と異なり、文字として静止状態で内容を伝えます。会話の場合元に戻って確認することはできませんが、文章は前記の内容を常に確認することができてしまいます。このため会話の時は気にならない些細な文法的ミスでも、読み手はすぐに気づいてしまいます。

これと同じく、文章は会話と比べて表現の不自然さが目立ちます。会話では不自然な表現でもある程度のレベルまでなら違和感なく聞き流せますし、たとえ多少変でも慣れてしまえばそれほど気なりません。

ところがこれが文章だとそうはいきません。多少であってもおかしな表現は目に付きますし、慣れることもありません。どれだけ読んでもおかしいものはおかしく感じます。

文法と語法

文法とは言語全体に共通する一定のルールのことで、その気になれば誰でも身につけることはできます。

ところが、表現の「自然・不自然」は、いまだ共通ルール化されていない単語単位のルールである語法によるものなので、ほとんど感覚の次元の話になります。これがいわゆる「語感」と呼ばれるものです。

この語感を磨くには「多読(+多写)」をするしかありません。これは一朝一夕で身につくものではないので、ほんとうに自然な文章を書けるようになりたいのなら、相当の時間と努力が必要になります。

中国人の中国語ライティング力

ライティングについては

「中国人のような文章を書く」

という発想はやめた方がいいかもしれません。

中国人が書く文章が正しいとは限りません。おかしな文章を書く人もたくさんいます。日本人だからといって日本語でしっかりとした文章が書けるとは限らないのと同じです。

中国語でもある程度のレベルになると、たとえ自分ではまともな文章が書けなくても人の書いた文章の良し悪しぐらいは判断できるようになるのですが、中国人でもおかしな文章を書く人はたくさんいるものです。

中国人に文章を添削してもらったといっても、その表現がまともなものである保障はどこにもないのです。

これは私の持論ですが、こと発音と作文については、たとえネイティブスピーカーであったとしても非ネイティブスピーカー対して教授する訓練を積んだ者しか正しく技術を伝えることができないと思います。

母語

あともう一点、これはある意味非常に厳しいことなのですが、母語(日本語)で文章を書くことが苦手な場合、中国語の作文の出来もあまり期待することはできません。

母語にせよ中国語にせよ、文章を書くのに必要な技術(言語能力)は基本的に同じです。

言語精通度に問題のない母語でも文章ができない場合、語学力で劣る中国語で文章を作成することなんてできるわけないのです。

文章を書くことが苦手な方は、中国語の作文をする前に日本語で文章を書く練習をした方がいいかもしれません。

文章作成の技術自体は成人後でも十分身につけることができると思いますが、言語運用能力自体が低い場合は苦労することになるかもしれません。成人後に言語力そのものを高めるのは簡単なことではないからです。

中国語で考える

ライティングの学習方法についてはスピーキング学習と共通する点が多いです。共にアウトプットの分野であるからでしょうか。

共通する方を先に挙げておきます。まず、中国語で文章を書くときは、中国語で考えて書くようにしてください。

日本語からの翻訳作文は厳禁です。日本語と中国語では修辞技法に大きな相違が存在するからです。

中国語では成語を形容的用法で使ったり、古語的表現を混ぜたりする修辞法が頻繁に使われます。これは日本語からの翻訳では到底出てこない代物です。

また、何らかのものを例として挙げる場合でも、言語が異なれば文化も異なり、物事に対する見方も異なってくるので、期待した効果が得られないこともよくあります。

例えば日本ではイメージの悪いコウモリですが、中国では「福」と同じ発音ということで吉祥とされ、縁起物の図柄に用いられます。一方日本では「忠犬」のイメージが強い「犬」ですが、中国ではロクでなしのイメージが強く、罵り言葉で多用される言葉となります。

これら文化的要素のため、日本語からの翻訳作文ではどうしても日本語風味の文章となり、結果として不自然な翻訳式の文章しかできなくなってしまうのです。

翻訳法はプロの技

はじめから外国語で考えて書くというと難しそうに聞こえますが、スピーキングの項目でお話したように、考えられているほど難しいことではありません。

逆に、いちいち日本語から翻訳しながら作成する方が難度はがはるかに高くなります。翻訳しながら、且つ自然な文章にするのはプロの翻訳者がすることなのですから。

また、ライティングもスピーキングと同様、上達するにはたくさん書くことが不可欠です。

このため、日常的にライティングをする機会を作っていくことがライティング上達の近道となります。ライティングの機会をつくる方法については順を追ってご紹介していきます。

まとめ

具体的な学習法を紹介する前に注意事項を改めて整理しておきたいと思います。

1.文法的正誤性

文章は静止状態にあるため文法ミスがことのほか目立ちます。

2.表現に気を配る

会話の場合誤解が生まれてもその場で訂正できますが、文章の場合はそれができません。

特に礼を欠くような表現や不快感を与えてしまう表現などが含まれていないかどうかぐらいは確認しておきたいものです。

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Time:
2006-03-01 Last modified: 2018-08-17