辞書を引くことは語学の基本です。それゆえに辞書の使い方の善し悪しは中国語学習効果に大きな影響を及ぼします。
また昔話になりますが、以前学校(たしか高校生の時)では(少なくとも私は)、意味の分からない単語があったらすぐに辞書を引き、その単語の部分についてはすべて目を通せ、と教えられました。
それから10年、二つの外国語を勉強した今改めてこの言葉を振り返ってみると、妙に感慨深いものがあります。
ロスタイム
辞書を引くにはある程度時間がかかります。それがたとえ引き慣れていたとしてもです。中国語学習において時間はいくらあっても足りないものなので、極力無駄な時間を使わないようにすることが上達への近道であることを考えると、たとえ数十秒のことであったとしてもこの辞書引きロスタイムは馬鹿にならないのです。
そもそも辞書を引くのは単語の意味や用法、発音を調べるためです。発音が分かっていて意味や用法も対訳や文章から理解できる場合は、辞書を引く意味は薄れます。
加えて問題になるのは辞書を引いていると勉強している気になってしまうことです。辞書を引き、単語帳を埋めていくことで「勉強した」と満足感に浸ってしまう人も少なからずいます。
ところが、実際にはたとえ辞書を引き、単語帳を埋めたとしても、それと中国語力の上達は無関係です。いくら単語帳を作っても、それを身につけなければ何の意味もないからです。
肝心なのは語彙力を身につけることです。それに貴重な時間をつぎ込む方がより効果的です。辞書をめくる時間、単語帳に書き込む時間があったら、それを身につける時間に使った方が上達がより早くなるのは当然ですから。
辞書をめくっている時間はあくまでもロスタイムだと考えてください。私が電子辞書や辞書ソフトの使用をすすめている理由の一つは、これらの方が素早く意味を調べることができるからです。
中中辞書
辞書を引くことのマイナス面ばかり強調してきてしまいましたが、実はこの辞書引きタイムをロスタイムから学習時間へと変えてしまう方法があります。ここで登場するのが「中中辞書」です。
中中辞書は中国語単語の語義が中国語で解説されています。このため、新しい単語を学ぶ過程で、これまで習得してきた単語を使用できます。習得済みの単語を固めつつ、さらに新しい単語を学ぶことができるという、一種の理想的な学習環境を構築することができる(※)のです。
(※この点については中国語単語学習法で紹介している語彙力増強法に通じるものがあります。別途ご参照ください。)
また中中辞書の利点はこれに止まりません。一つの言語を別の言語に置き換えるということは、一般に考えられているよりずっと難しいことです。
中日辞典の日本語訳は必ずしもその中国語語彙の語義・語感を100%正確に反映しているとはかぎりません。中中辞書を使用することで、より自然な中国語の語感を養うことができるようになります。
中中辞書を使いこなすにはある程度の中国語力、少なくとも中級レベルの中国語力が必要になりますが、中中辞書を自由に使いこなせるようになると新しい中国語の境地が見えてきます。ひとまずの目標をここにおいても良いのではないでしょうか。
中中辞書については『現代漢語辞典』をおすすめします。中国で最も広く使用されている中国の国語辞書です。
また、日本の電子辞書で『現代漢語辞典』を収録しているものは現在のところありません。中国製の電子辞書なら好易通の『英語直通車』等がこの辞書を収録していますが、日本では購入できないようです。
既に中上級レベルに到達し、中中辞書の電子辞書がどうしても欲しいなら中国旅行を兼ねて買出しに出かけてもいいのではないでしょうか。
なお、『英語直通車』は拡張カードで日中・中日辞典を追加できますが、これはおまけみたいなものなのであまり期待しない方がいいと思います。
おすすめの中国語電子辞書「CANON wordtank シリーズ」の最新版である「90シリーズ」に『現代漢語辞典』が収録されました。