本頁では多読学習に利用できるリーディングソースについてレベルを追って紹介していきたいと思います。
初級者でもできるリーディング学習
先にリーディングは精読にはじまり多読に移行していくのが効果的と解説してきましたが、これは何も初級段階における多読を否定するものではありません。
初級段階で適度な難易度の文章を多読することは、語感を養うためにも、また多読の習慣をつけるためにも非常に効果的です。
そこで、以下に初級の初中期段階で利用できる多読学習素材をご紹介しておきたいと思います。
子供向け書籍
初級者用の教材は基本的に精読用に設計されているので文章そのものが少なく、また細かい解説も入っていたりするので、ついつい精読してしまう恐れがあり、多読には向きません。
要は語彙の難易度が低く、且つ数の少ないものを使用すればいいので、中国人の子供向けの書籍を使用されることをおすすめします。
中国人の子供向けの書籍は日本では市販されておりませんが、ネットショップで簡単に個人輸入できます。子供向けの書籍については「中国語子供向け教材」でも取り上げていますので、合わせてご参照ください。
中国語版日本マンガ
中国語会話学習の項でも紹介した中国語版の日本マンガはリーディング学習にも利用できます。
マンガなので単語が多少分からなくてもストーリーを理解する妨げにはなりませんし、なにより勉強している気にさせません。
初級者の、特にこれから多読を始める学習者のリーディング素材としては理想的なリーディング素材ではないでしょうか。
なお、これも中国版の子供向け書籍と同様ネットショップで簡単に個人輸入できます。中国語版日本マンガについても「中国語教材を斬る!」の「中国語版日本マンガ」で取り上げていますので、合わせてご参照ください。
初級後期~中級初期からできるリーディング学習
この時期になると一段上の多読学習が可能になります。視野を広げ、中国語の語感を早期に養うためにも重要な時期となります。積極的に多読学習を進めてください。
以下に初級後期からで利用できる多読学習素材をご紹介します。
対訳付き読み物
初級後期の段階に入ったら、簡単な小説ぐらいは読めるようになると思います。
ただし、リスニングと比べ文字になっている分ゆっくりと読み進めることができ、また辞書等を参照することもできるとはいえ、このレベルでは多少ストレスを感じるかもしれません。
もっともわからない単語に突き当たる度に辞書を引いていてはいつまでたっても先に進みませんし、そもそも量を追及すべき多読学習ではなるべく辞書を使わないようにするのが基本なのですから、これでは本末転倒というものです。
そこで、始めは『中国語で短編小説を読もう! ~天下無賊~』のような日本語対訳付きの中国語読み物から始めることをおすすめします。
対訳付きの利点は単語の意味がわからない場合すぐに和訳文で参照できること。辞書を引く必要はありませんからリーディングの速度に大きな影響を与えることもなく、且つ意味がわからないことから生まれる学習ストレスを回避することもできます。
日中名作の翻訳版
この段階では日本の小説の翻訳版もおすすめです。ストーリーを知っている分読みやすいからです。もし日本語の原著を読んでなければ事前に読んでおいてください。
なお、中国のネット世界はパクリフリーに近い状態ですから有名作品はネットで読みたい放題。著作権も××もありません。このため、日本の有名作家の作品の中国語版も簡単に見つかります。
また、これと同じ原理で先に日本語翻訳版を読んでから中国の書籍を読むという方法もあります。いわゆる名著と呼ばれるものは大体翻訳されてますから。
とにかく基本は理解しやすい物、興味のある物を選ぶことです。間違っても「三国志が好きだから」と言って古典をそのまま読まないようにしてください。
もちろん、子供向けに再編集されたものなら古典の名著でも構いませんが。
新聞・雑誌
語学の教材として古くから広く使用されている素材です。もちろん日本で直接購読できる中国語の新聞や雑誌もあります。
慣れるまでは中国語学習者用に設計された対訳付の雑誌を読むのが良いと思います。「中国語教材を斬る!」で紹介したCD付中国語学習雑誌を利用してもいいでしょう。
また、日本のニュースを中国語で読むのもおすすめです。日本のニュースの場合背景知識を持っているので、理解度も高く、何より読みやすいです。
ある程度リーディングの速度が上がってきたら日本語の新聞をやめてしまうのも手です。こうすると中国語紙が純粋に情報源となるので勉強の感覚がいっそう薄れます。
中国語のニュースはインターネットで無料閲読できますので、積極的に利用していきたいですね。
通勤の電車の中などで読みたいという方は中国語の新聞や雑誌を定期講読してしまいましょう。無料のインターネットに比べ、たとえ数百円であっても自腹を切って購読する新聞や雑誌は「読まなければ」という意識を喚起しやすいものですし、また定期的に送ってくるのでペースメーカーにもなります。
これらの利点を考えれば、自分に流されやすい方は定期購読してしまった方がいいかもしれません。
なお、日本で定期購読できる中国語紙には『関西華文時報』や『時報週刊』等があるようです。
その他中国語の新聞・雑誌は「Fujisan.co.jp」で購読すればいいでしょう。
勉強にしない
念のため注意書きしておきます。
小説にせよ、あるいは新聞や雑誌にせよ、ここではあくまで多読としてのリーディング学習なので、中国語の勉強としてしまわないようにしてください。
要は日本語の小説や新聞、雑誌を読むように読めばいいのです。小説は娯楽のため、新聞や雑誌を読むのは情報を得るためです。新聞だったら世の中の出来事を知るために読みます。それを中国語でするだけです。
日本語の新聞を読むときの考えてみてください。まず、新聞を全文、隅から隅まで読むことは絶対にありません。そこまで暇ではありませんから。
普通見出しに目をやり、興味を抱いた記事だけを読みます。時間がないときは見出しと最初の段落だけに目を通します。最初の段落だけ読むのは、基本的に新聞は最初の段落に全体の要約文が記載されているからです。これは中国語の新聞でも同様です。
当然ですがいちいち辞書は引きません。分からない言葉があっても前後の文から推測します。
これと同じことをすればいいだけです。簡単でしょ。いちいち辞書を引く必要はありません。というよりも引かないほうがいいです。単語を覚えるのが目的ではありませんから。
知らない単語に遭遇したら、前後の文や全体の内容から意味を推測するようにしてください。この「推測力」を養うことも単語を覚えることと同じぐらい重要です。
気に入った文は切り抜いて精読の教材として使用するのも効果的です。たくさんある文章から自分で選んだものですから学習効果も高くなります。
中級中期以降からできるリーディング学習
中国語学習の後期に入ると選択の余地はさらに広がります。目的感もはっきりしてくるころですから、将来の用途に応じたリーディング素材を選択してください。
以下に中級中期以降から利用できる多読学習素材をご紹介します。
実用書
おすすめの方法です。中国語を「手段」として使用することができるからです。
実用書の場合目的は専門分野の習得になります。ここでは中国語は目的達成の手段でしかなく、細かい単語の意味などどうでもよくなります。
意識は書籍の内容に向かいますので、中国語を勉強している、という意識は薄くなります。しかも実用書は内容を分かりやすく伝えることを重視しているので、外国人にとっても読みやすいものです。
実用書を使用する事で、専門分野について勉強したら中国語力も知らない間に上がっていた、という夢のような体験をすることになるかもしれません。
問題は日本国内ではこのような実用書を手に入れることが難しいところにあります。輸入書籍を扱っている書店もありますが、実用書となると扱っている書籍の種類は限られてくるかもしれません。
そこで、この時期になったら思い切って中国旅行をしてみてはいかがでしょうか。ついでに本屋で本漁りなんかしても面白いですよ。
インターネット
インターネットは中国語学習者の福音です。その可能性はまさに革命的で、従来の中国語学習方法を根底から覆すだけの可能性を持っています。
インターネットには中国語の素材が溢れかえっています。特にリーディングの素材はほとんど無限にあり、絶えず増殖を続けています。
また、リーディングという点から言えば、ネットでのリーディングはパソコンを使用しますので、中国語辞書ソフトを使用できるという利点もあります。
辞書を引く時間を大幅に短縮できると言うのは、時間がいくらあっても足りない語学において非常に大きなアドバンテージとなります。
とはいっても分からない単語を推測する力をつけることも重要なので、辞書ソフトに頼り過ぎないように気をつけてください。
辞書ソフトは『ChineseWriter8』をおすすめします。バージョンアップしてさらに洗練されたようです。
『ChineseWriter8』については「中国語教材を斬る!」で詳述しておりますので、別途ご参照ください。