自己分析はこれから中国語を始めようとしている人、または既に始めている人でも、中国語学習法を構築するには欠かせないものです。
で、何を分析するのかと言うと、「現在の中国語力」「性格」「学習環境」の3つです。
このうち「現在の中国語力」についてですが、中国語は義務教育では学ばないので、大半の方が新規出発組か、よくても大学の第2外国語レベルの中国語力しかないと思われます。そのため、本項では新規出発組を前提に考えていきたいと思います。
既にある程度の中国語力をお持ちの方はご自身の状況に合わせて情報の取捨選択をお願いします。
そこで「現在の中国語力」の分析は省略し、「性格」分析から始めたいと思います。以下に中国語を学ぶ上で有利な性格と不利な性格について、思いつくまま列挙しますので、参考にしてください。
有利な性格
1.持続力がある
中国語は2、3日で身につけられるものではないので、どうしても持続力が必要になります。これは、中国語に限らず、語学をするには不可欠なものです。
持続力に欠ける方は明らかに不利ですが、やる気を起こさせる方法もいろいろ研究されています。持続力に自信のない方は事前に調べておくといいでしょう。
2.積極性
これもよく言われるものです。積極性については会話の上達に大きな影響を及ぼします。言い間違えるのを恐れて話さなかったら、会話は上達しようがありません。
一般に外国語の学習において日本人は積極性に欠けると言われていますが、これはほんとうにもったいないことです。
私は留学中、自分から積極的に話しかけていくように心がけていました。傍から見たらナンパしているようにも見えたそうですが。(^_^;)
一応念のため言っておきますと、別に女性を狙って話しかけていたわけではありません。外国語大学だったので、女性の割合が大きかっただけです。
それはともかく、それによって友達も増えましたし、学習書では学べないことも知ることができました。
中国語を身につけたいなら、中国語を使う機会に貪欲になることです。これが上達の早道となります。
不利な性格
1. 完全主義
何事も徹底的にやる人たちです。一見語学に向いてそうですが、実はそうではありません。
例えば、完全主義者はテキストにせよ、単語本にせよ、すべてやり切らないと気がすみません。別にもっと効果のあるものがあっても、とりあえず残りをやりきってからでないと移ろうとしません。
またよくパターンとして、会話の際、文法に気が行き過ぎて話せないというものがあります。結局満足に話せずに終わり、上達の機会を失ってしまいます。
「完全」の対象を変えればいいのですが、どうしても細かいところが気になってしまいます。ちなみに私もこのタイプでした。
2.几帳面
完全主義に似ていますが、多少相違点があるので別扱いにしました。几帳面な人の問題は、本来の目的から外れて、どうでもいいことにこだわってしまうことです。
例えば、単語帳を作るのは単語を憶えるためですが、几帳面な人は単語帳を作っているうちに、単語帳を作ることに熱中してしまいます。
そのうち単語帳を作成することが目的化してしまい、単語帳を完成させることで単語ま憶えたように錯覚してしまいます。
3.理系型
言葉は人間の思考や感情を伝えるものなので、理屈だけで割り切れるものではありません。
ところが理系型の人は物事を理論的に考えますので、中国語についても理論で割り切ろうとする傾向があります。
このため、理系型の人が中国語を勉強する場合、中国語は文法事項にのっとって単語を埋めていけばいいという発想をします。
しかしながら、実際には言葉はそんなに単純なものではありません。例えば、言葉は全く同じ表現でも、イントネーション、使用する場面等によって全く正反対の意味になります。一昔流行った「ほめ殺し」はその典型でしょう。
なお、女性の方が語学に向いているといわれるのは、この点が大きく影響しているものと思われます。男性は理系型が多いからです。
言葉は人の思考や感情を伝えるものなので、すぐれて人間的なものです。そして、この人間の思考や感情はアナログなものです。
0と1だけで割り切れないところに、言葉の難しさと、面白さがあると私は考えています。
習得目的の明確化
中国語を勉強する目的は人それぞれと思います。いろいろあると思いますが、今思いつくだけ列挙してみたいと思います。
- 中国に赴任することになった
- 国内勤務だが業務上中国語が必要になった
- 中国語を使用する仕事に就きたい
- 留学する
- 旅行で使いたい
- 中国語が趣味
- 語学を勉強したいが英語は嫌い
まだまだあるとは思いますが、いずれにせよ、中国語の用途がはっきりすると、到達すべき中国語能力及び言語の四分野「聞く・話す・読む・書く」において、それぞれどの程度の運用能力が必要になるのかはっきりします。
中国語は道具
趣味としての中国語を除いて、中国語はあくまでも目的を達成するための道具です。たとえ中国語を使用する仕事に就くのが学習の目的でも、就職後は中国語を使って要求される仕事を完成させる必要があるので、結局中国語は目的(仕事)を達成するための道具となります。
逆に言えば、目的を達成するだけの能力があれば事足りるわけで、仕事上必要とされない分野の能力は必要ありません。
例えば、旅行好きで旅行先で買い物や観光、あるいは知り合った人とおしゃべりを楽しみたい、というのが目的である場合、重要になるのは「聞く・話す」の能力となり、読み書きの能力は特に重要ではありません。
また、仕事で使用する人の場合、どのような仕事に従事するかによって大きく変わってきます。電話を受けるだけでしたら「聞く・話す」の能力だけでも十分ですが、メールのやり取り等もする場合は「読む・書く」の能力が必要となります。
比較的低い中国語力でも対応できる仕事もあれば、かなり高度な中国語力を要求されるものもあります。
中国語専門職(通訳・翻訳)の仕事に就く場合は、更に高度な中国語が必要になります。当然通訳と翻訳では全く異なった方面の能力を要求されます。
翻訳の場合、日→中、中→日で全く異なってきます。本来は通訳と翻訳は全く別物なので常識的に考えれば兼務することはおかしいのですが、前述のとおり中国語の世界では需要に限りがあるので、他に仕事を持っている人でもない限り、両方されている方が大半です。
ということは、通訳・翻訳両方の技能が必要になるわけで、その難度は言わずと知れたものがあります。 また、中国語専門職の場合、中国語力は当然の大前提で、それ以外の能力(通訳・翻訳技術/専門知識)がより重要になってきます。
やめる勇気も必要
将来中国語を使った仕事に就きたいと考えている学習者の場合、勉強を始める前に目的を達するためにはどの方面の能力がどれだけ必要になるか調べてみてください。そして実際に成功した人の例を集め、自分に可能かどうか検討してください。
もし時間的、性格的、その他の諸条件から不可能と判断した場合は、計画自体を放棄したほうが無難です。
放棄といっても、中国語習得の目的が趣味のレベルなら気楽なものですが、仕事で使用する計画だった場合は、人生設計そのものを変更する必要に迫られます。
とはいっても、大量のお金と時間をつぎ込み、失敗に終わってから後悔するよりはずっといいでしょう。道は他にいくらでもあるのですから。
精神面の克服
一方、中国語を身につけなければいけない差し迫った理由のある方は個人差こそあれ必ず身につきます。
ただし、いやいや勉強する場合は伸びが悪いですし、必要最低限の能力しか身に付かなくなります。このような場合は中国語を学ぶ中に楽しみを見つける努力をしてみてください。
基本的には「興味を持つ」「好きになる」「達成感を感じる」の3点を喚起できればよいのですが、こういった精神面に関する問題解決のパターンは本当に人それぞれ、千差万別なので、一言でアドバイスすることは困難です。
このような場合は、同じように精神面の問題を克服してきた学習者の例をいろいろ集めてみて、自分にも効果があるかどうか試してみてはどうでしょうか。
例えばいろいろな映画を見たり音楽を聴いたりする中で自分の好きなものを見つける、同じ趣味を持つ中国人の友人を作る、といった方法です。
こういうものはちょっとしたことがきっかけになることもあります。積極的に中国人、あるいは中国語を勉強している日本人と交流を持つことをおすすめします。