最近音読学習がにわかに脚光を浴びてきています。音読学習とは文章を声に出して読む学習方法で、最も古典的な外国語学習法の一つでもあります。
音読は「語学とは「文法」と「単語」を覚えることだ」、という発想だった一昔前の語学学習の中で軽視されてきました。何がきっかけで再評価されたのかは知りませんが。
音読学習の利点
音読学習の利点はたくさんあります。まず、実際に口を動かすことは、会話力をつける上で大きな意味があります。
会話はほとんどスポーツのようなものです。スポーツをされている方はすぐ分かると思いますが、どの競技でも、日常の訓練において基本動作の繰り返し訓練を行います。そうすることで実際の試合の中で体が自然と動くようになるわけです。
会話もこれと同じで、反復練習で口の筋肉に動きを覚えさせれば、実際の会話の中で自然と口が動くようになります。
また、音読中は読むことに気が行くので和訳できなくなります。これは和訳癖を直すのに非常に役に立ちます。
中国語会話において、日本語を介さず中国語を中国語のまま処理することの重要性を考えると、これは大きな利点です。
この点に関する詳細は「中国語脳」で詳述していますので、別途ご参照ください。
練習方法
具体的な練習方法ですが、基本的に音声があるものを用意してください。はじめは音声を流しながら、音声に合わせて文章を読み上げていくと楽です。
このときは発音とイントネーションに注意を払うようにしてください。手本となる音声の音程をそのまま真似るようにしてください。
繰り返す回数は、基本的には多ければ多いほどいいです。欲を言えば文章を覚えてしまうまで繰り返した方がより効果的です。
「覚える」というと何か大変そうですが、何度も繰り返していると自然に覚えます。だいたい100回読み上げれば大半のものは覚えてしまいます。
「覚える」ことに重点をおく場合は音読する文章の長さを短めにしてください。長いものは複数に分割してもいいです。
私の場合は一回一分、一セット十回を目安に文章を分割して音読しました。一分程度の文章を一日十回音読すると一週間で70回となります。70回やると大体のものは頭に入ります。量を増やす場合は一日2セットや3セット行うようにしていました。
日数、回数は学習者の環境及び性格などに合わせて設定してください。例えば、初日は10回、2日目は9回、3日目は8回というように日を追うごとに回数を減らしたり、初日から3日目までは10回、3日目から5日目は7回というように回数を減らしても基本的に効果は維持できます。
なお、50回も読めば覚えてしまうものもあれば100回読んでも覚えられないものもあります。とはいっても覚えることが目的ではありませんし、文章との相性もありますので覚えることについては必要以上にこだわる必要はありません。
私はこの方法でテキスト数冊をほとんど丸暗記しました。初中級者には特におすすめの学習法です。
テキストの選択
音読学習においてもテキストの選択は非常に重要です。特に文章を覚えてしまいたい場合は文章の難易度、長さ等を細かく調節する必要があります。
特に長さは重要です。長すぎるとストレスがかかり疲れてしまいますし、短すぎると短文と大差がなくなってしまいます。
学習効果を最大限に高めるにはストレスがかからない長さで、且つ一定の内容をもつ文章を使用する必要があります。
文章の長さに関しては個人差があるので絶対的な数値を設定するのは難しいですが、参考までに私のケースをご紹介しておきます。
私の場合1分強で読み終わることができる長さを一つの目安にしています。2分を越えるとストレスを感じ、1分を大きく割り込むと物足りなさを感じるからです。
もちろん文章の難易度も関係してくるので一概には言えません。実践においてはいろいろと試しながら自分に合った長さ、難易度を測っていくしかないのではないでしょうか。
音読学習書
テキストについては音読学習用に設計された学習書を使用するのも一計です。特に音読学習をしたことのない学習者にとってはこの方が無難かもしれません。
ただし、中国語の場合テキストが豊富ではないので、選択の余地が狭いのが残念なところです。
現状で音読を意識して作成されたテキストは以下ぐらいなものでしょうか。
『入門を終えたら挑戦!朗読中国語―NHKラジオ中国語講座』
『音読で味わう中国名著故事』
『楽しく学ぶ中国笑話選』
『入門を終えたら挑戦!朗読中国語―NHKラジオ中国語講座』はNHKラジオ中国語講座から応用編の部分を収録したもののようです。NHKの中国語テキストということでまあ無難な選択だと思います。
『音読で味わう中国名著故事』は中国の名著を音読するという一風変わったテキストですが、中国語の古典は日本人にとって馴染み深いものが多いので、これはこれで面白いのではないでしょうか。
『楽しく学ぶ中国笑話選』の利点は暗唱するのに適当な長さであることですね。笑い話ということで印象にも残りやすいですし。
この他のテキストについてですが、個人的にはやはり「中国語教材を斬る!」でも紹介した『国民的中国語教本 ときめきの上海』がおすすめです。