初級者にとってより重要となる「精聴」学習ですが、その代表的な学習法が横文字でディクテーションと呼ばれる、いわゆる「書き取り」という、テープやMDなどを使用して、文章を紙に書き取っていくものです。
ディクテーションという横文字を使うと何か新鮮に聞こえますが、先達の中国語学習者はほとんどこの方法でリスニングを学習してきています。
ディクテーションの目的は「音を正確に拾えるようになること」で、「内容を理解すること」ではないことに注意してください。
ディクテーションの意義
このディクテーションですが、想像以上に手間がかかります。50字に満たない文章をディクテーションするのに30分や1時間かかることはざらです。
ここからディクテーションを嫌う方々は「ディクテーションは効率が悪い」と主張しますが、これはディクテーションの目的を取り違えています。
ディクテーションは内容を理解する訓練ではなく、語彙の発音及び声調について確認し、耳に焼き付ける訓練です。
逆に言いますと、ディクテーションを文章の内容を聴き取る訓練として使用すると、確かに効率が悪くなります。
それぞれの訓練にはそれぞれ意図するものがありますので、それに沿って使用することを心がけてください。
上記の理由から、ディクテーションをする場合は文章の量よりも質に重点を置く必要があります。
たくさんの文章を聴くことではなく、あくまで正確に聴き取れない音や四声を確認することが目的です。簡単に聴き取れるものでは効果が上がりませんので注意してください。
ディクテーションの欠点
私もディクテーションは嫌いでした。学生の時から座って勉強するのが嫌いで、「書く」ことを避ける傾向があったためです。
まだ駆け出しの頃に試しにやってみましたが、余りにじれったくなる作業のためあっさりと放棄しました。
今思えばディクテーションといっても闇雲な方法で、テキストもなく、ひたすらテープを聴いて音声と辞書だけを頼りに書き取るだけでした。続かないのも無理はありませんね。
このように、ディクテーションの欠点は手間のかかることです。そして、手間のかかる原因は書き取るところにあります。そこで、ディクテーションのように何度も繰り返し聞くけど、いちいち書き取らず、頭の中だけで確認するという方法もあります。
書くのが嫌いだった私はこの方法を多用しました。私の場合は一文ずつ何度も繰り返して聞き、これ以上繰り返してもわからんだろうな、と感じた時点で スクリプトを参照し、発音や内容を確認していました。
書き取らないことを除けばディクテーションとあまり変わりはなさそうですが、繰り返し聞く頻度は一般的なディクテーションに比べ少なかったと思います。要は諦めが早かったということなんですが。
この方法の場合ディクテーションほど手間がかからないので、より多くの量をこなすことができます。
しかしながら、音に対する丁寧さではディクテーションの方がはるかに優れているので、ディクテーションの代替策として完全に取って替えることはできません。
ディクテーションの手順
ディクテーションの方法ですが、ここでは典型的なディクテーションの手順をご紹介しておきます。
1.テキストを準備する
テキストは市販されている教材でも、ニュースや映画など生の素材でも構いません。ただし、生の素材を使用する場合はスクリプトが手に入るものを使用してください。
音声はiPodやICレコーダー、もしくはパソコン等に取り込んでください。
2.聴き取れない部分についてリピート機能を利用して繰り返し聴く
聴き取れない部分を確認することに意義があるので、ぜんぜん聴き取れないといってもがっかりすることはありません。聴き取れない部分が多いほど効果も大きいものです。
繰り返す回数は多めにしてください。100回繰り返せという人もいますが、過度にストレスをかけるのは好ましくないので、適度に調節してください。また、繰り返す場合は文単位かセンテンス単位で行ってください。
どうしても聴き取れない部分も出てくると思いますが、自分なりにピンインを使って埋めていってください。
もうだめだ、というところまで繰り返したらスクリプトと突き合わせて確認します。どの発音が聴き取れていないのか、また聴き分けができていないのか確認してください。
ディクテーション教材の利用
このディクテーションですが、リスニング力向上には大変有効な方法である半面想像以上に大変な作業でもあります。
ディクテーションのコツを掴み、習慣化できればいいのですが、これに失敗するとディクテーション学習が原因で中国語に挫折してしまいかねない、ある意味で「危険な」学習法です。
そこで、次のようなディクテーション学習用に設計された学習書を利用することで、ディクテーション学習が持つ危険な側面を回避することも一計です。
『中国語聴き取りトレーニング』 市瀬 智紀、程 艶春 (著)
ディクテーションの準備にかける手間を考えても、特にディクテーション初心者にはこのような教材の利用をおすすめします。