たとえスクール等に通っていたとしても、個人的に発音の練習をすることは重要なことです。
特に、日常的に会話する機会がないような場合、知らず知らずのうちに発音が日本語化していってしまいます。
かくいう私も、現在に至るまで中国語の勉強をするときは必ず発声練習をするようにしています。
そこで、発音の独習を行う際注意すべき点についてお話していきたいと思います。
カタカナは厳禁
入門教材の中には発音の表記にカタカナを使用しているものがよくあります。
ピンインに習熟するまでの補助という位置づけなのでしょうが、これは一日も早く卒業してください。
中国語に限らず、外国語の発音を練習する際にカタカナを使用するのは好ましくありません。
カタカナは日本語の発音の中で近いものを使用するのですが、発音構造が全く違う中国語の発音を完全に表現することは不可能です。
カタカナを使用している限り、中国語の発音を身につけることはできません。ピンインの数は限られたものなので、なるべく早く覚えるようにしてください。
練習するときは大げさに
発音をまだ習得しきっていない学習者が発音の練習をする際は、大げさに強調するぐらいが望ましいと思います。
「a」の発音をするときは口をこれでもかと言わんばかりに大きくし、「yu」の発音をするときは思いきり唇を結ぶようにしてください。
声調の練習をする時は、一声は限りなく高く、二声は不自然なぐらい力強く語尾を上げ、三声は奈落の底に落ちたように音を抑え、四声は高層ビルから飛び降りるつもりで声を落としてください。
極端なように聞こえるかもしれませんが、これぐらいやっておいてはじめて実践において適切なレベルになります。
もちろん、実際の会話の際は、練習のときのように大げさに発音する必要はありません。
といっても、実際の会話の際はいちいち細かい発音にまで気を配る余裕はないので、その心配はありませんが。
なお、既に発音をマスターしていて、それを維持するために発声練習を行う場合は、ここまで大げさにする必要はありません。
自分が苦手としている部分、日本語と隔たりが大きい部分に集中して練習を行うだけで十分です。
発音教本とネイティブスピーカー(中国人)の発音の相違点
よく発音練習教本で唇の動きや形についていろいろと解説されていますが、実際の中国人の唇は教本の見本ほど動いていません。
ただ単にはっきり発音していないだけなのかもしれませんが、どうもそれだけではないようです。
たとえば、「a」の発音は口を大きく開けるように言われますが、実際には口を大きく開けるというよりも、口の中を大きく、広くするようにして発音することがポイントであるようです。
教本で口を大きく開けるように言っているのは、口を大きく開ければ口の中が広くなるからなのでしょう。口を開かず口の中を広くするのは、日本人には難しいでしょうから。
中国語に濁音はないのか?
中国語には濁音がないとされています。そのかわりに有気音と無気音で区別する、といいます。これはそのとおりなのですが、ここから、「中国語には濁音がない」という考え方が生まれ、何が何でも清音で発音しようとしている方を見かけることがあります。
しかしながら、中国人の発音を聞いていると、濁音っぽいものをよく聞きます。この原因はどこにあるのでしょうか。
答えは、中国語(普通語)には濁音がない、わけではないところにあります。濁音がないのではなく、濁音という概念がないのです。そのため、特に軽声等では無気音が濁音のように聞こえることはよくあります。
逆に言えば、濁音で発音しても、中国人は濁音として聞き取らず無気音として聞き取ります。
このため、日本人が中国語の発音するにあたって、ことさら濁音と清音の区別にこだわる必要はないのです。
日本語は基本的に無気音なので、有気音をしっかりと発声できるようになることが、通じる発音を身につける上で近道となります。
二声と三声
よく日本人は三声が苦手だと言います。下がってから上がるという、日本人から言わせれば明らかに不自然な発音のためでしょう。
しかし、私が思うに、日本人にとって最も難しいのは三声ではなく二声です。三声は下がってから上がる音とされてきましたが、実際には低く抑えた音で、下がってから上がるという発声は限られた状況下でのみ行われます。
この低く抑えた音のことを「三半声」と言うのですが、実際に多用されるのはこちらなので、これこそが真の三声である、という意見が広く支持されるようになってきているようです。
この三半声は、コツさえつかんでしまえば簡単です。声を抑えればいいのですから。
一方、二声というのは実は非常にやっかいな声調です。
二声は上がる音で、大きなエネルギーが要求されます。意識して、単独で発声する場合は問題とならないのですが、実際の会話の中では発音にまで気を配ることは難しいので、知らず知らずのうちに二声の上がり方が不十分になり、日本人特有の抑揚のない発音になってしまいがちです。
すらすらと話せる上級者ほど陥りやすいので、発音に自信がある方でも、一度テープなどに会話を録音して確認してみるのもいいかもしれません。