中国語の学習を始めるに当たって、一番初めに思い浮かぶのがあの苦しかった学校英語ではないでしょうか。
特に中国語学習者の中には英語が嫌いだから中国語を選んだという方も少なくないと思います。
学校英語について詳しくは英語学習室の「学校英語教育の是非」を参照していただくとして、ここで学校英語について言及するのは、中国語の学習を進めるに当たって学校英語が良い反面教師となるためです。
日本の学校英語教育は、英語の知識を詰め込むことに熱を上げており、これが英語嫌いを大量に生産する元凶となっています。 言語学としての英語を教えるのならばそれでいいのですが、それは大学で英語学を専攻している学生がすればよいことで、中高生がすることではありません。
私は英語を体育や音楽と同じ範疇で捉えるべきだと考えています。スポーツや楽器演奏の能力は「できる/できない」で形容されるものです。英語も本来は「できる/できない」で形容されるべきものなのに、日本の英語教育は「知っている/知らない」で形容できる、知識を重視するものになってしまっています。
中国語も同様です。くれぐれも学校教育のノリで学習を進めないうようにしてください。
中国語学習と守破離の法則
さて、この「できる/できない」に分類される分野には共通の特徴があります。それは「師弟」関係によって技術が継承されることです。
ほとんどの方が小さいころに書道等の習い事を経験していると思います。
ずいぶん過去の記憶になるとは思いますが、見本があって、ひたすらそれを真似ていませんでしたか?時には見本をなぞったり、また時には先生に手を取って教えてもらったり。
そうやっているうちに、だんだん上達してきます。見本の通りに書くことができるようになると、自分なりにアレンジを加えたくなります。調子に乗って派手に字体を崩したりすると先生に怒られますが、そんな中でも自分なりの型を模索していきます。
このパターンのことを「守破離」といいます。これは、物事を学び始めてから独り立ちするまでを三つの段階に分けたものです。「守」では、師匠の教えを守っていきます。師匠をまねることで、その道を自分のものにしていきます。
「破」の段階では、師匠の教えを守るだけではなく、破る行為をしてみます。師匠から学び取った技術に独自の工夫を加え、師匠に教えになかった方法を試してみます。成功すれば、さらに自分なりの発展を模索していきます。
最後の「離」の段階では、師匠のもとを離れて、自分で学んだ内容を発展させていきます。
このようなパターンは書道に限らず、いわゆる習い事といわれるものに共通するものです。そして、中国語も習い事なので、この例外ではありません。
中国語学習の場合
中国語も習い事である以上、師匠について習うことが上達の早道となります。とは言っても別に中国語学校に行け、というわけではありません。「教師=師匠」となるとは限らないからです。
ここでいう師匠とは、同じ学習者として中国語を習得した先人です。
そこで、最終的には中国語講師のアドバイスに従うことになるのですが、このとき注意していただきたいこととして、中国語学習法についてのアドバイスを求める際は日本人講師を選ぶようにすることが挙げられます。
中国人中国語講師と日本人中国語講師
言うまでもありませんが、中国人にとって中国語は母語なので、日本人が中国語取得の過程で遭遇する問題を経験できません。
中国人中国語講師は中国語教授の技術は身につけているかもしれませんが、日本人としての中国語習得経験がないのです。
したがって、学習理論に基づくアドバイスはできますが、より実際的な、日本人が遭遇するような問題に対するアドバイスは過度に期待できません。
一方で日本人講師の場合は同じ日本人としての中国語学習経験を持っていますので、より的を得たアドバイスを期待することができます。
中国語学習理論と中国語学習経験
では日本人なら誰でもいいのかというと、必ずしもそういう訳ではありません。
学習者の置かれている環境は人それぞれです。もし講師が中国語専攻で、留学経験もあるような場合、社会人学習者に対してどれだけ的確なアドバイスをできるかどうかは未知数です。
また、性格も人それぞれです。学習方法には明らかに向き不向きがあるので、その講師には向いていたけれど自分には向いていなかった、ということもあり得ます。
可能ならば、自分の置かれている状況と同じような経歴をもつ中国語習得者を見つけてください。そのような人の学習方法は、学習者にとって大変示唆的で、実践的な内容となります。
なお、注意しておかなければいけないこととして、その中国語習得者が語学教育を専攻していない場合、その学習法は学習者の思い込みの部分を多分に含んでいる可能性があることが挙げられます。
これは専門的な中国語教育方法論を学んでいない、いわゆる経験派にありがちな現象で、このような人の場合無意識的にでたらめなアドバイスをしてしまうこともあります。
英語学習法から中国語学習法への応用について
中国語でも英語でも語学には変わりありませんので、英語の方法論を中国語に応用することは可能です。
英語の場合中国語に比べ学習法に関する情報が圧倒的に多いので、これらの情報を参考にすることも有益です。
もちろん英語と中国語は大きな相違がありますので、応用する際には言語的差異に注意を払う必要があります。
また、英語の学習法を応用する場合注意するべきものは言語的差異には止まりません。英語の学習法を応用する場合最も注意を払わなければならないものは学習者の学習経歴です。
このあたりの話は「英語習得の道と守破離の法則」をご参照ください。
学習法選択の際もう一つ注意しなければならないことがあります。それは語学の世界にはびこる商業主義です。
中国語関連の書籍の中には、表紙に「2週間」とか「7日間」といったような短い期間でマスターできることを殊更に強調しているものもありますが、世の中にそんなうまい話はありません。
もちろんこのような表紙の書籍の中にも内容的に優れているものはたくさんありますが、残念ながらかなりいいかげんなものもあります。
いずれにせよ基本的に中国語は短期間で楽をして身につけられるものではないことを忘れないでください。