「普通語」とは新中国成立後制定された共通語のことで、発音・語彙・文法の3点から次のように規定されています。
発音:北京語音を標準音とする 語彙:北方語の語彙を標準とする 文法:現代白話文によって著された代表的著作で使用されているものを標準とする
付け加えておきますと、発音は北京語音を標準とするとされていますが、これはあくまでも一定の処理を経て体系化された上での音韻体系を標準とする、という意味で、「老北京」と言われる、代々北京に生まれ育った人が使うような北京語の発音とはかなり異なります。
厳密に言うのなら、普通語の発音は人工的に作られた発音と言ってもいいでしょう。
語彙は北方語を標準としているので、北京語に比べ広い範囲で使用されている語彙が対象となっています。
この北方語は長江以北、長江以南では鎮江から九江までの長江沿岸地域、四川・雲南・貴州の漢族地区、湖北省の大部分、広西壮族自治区の西北部、湖南省西北部という非常に広範囲で使用されています。
これら地域で使用されている語彙の中には地域的な特性を持つものもありますが、これらは普通語から排除されています。
文法は発音や語彙に比べ地域差異が小さいので、普通語を習得し、方言の発音の特徴と地域的な語彙を習得すれば、方言も理解できるようになります。
方言
せっかくなので、方言についても触れておきます。
先ほどお話した北方方言に加え、中国語では、「呉方言」「湘方言」「贛方言」「客家方言」「粤方言」「閩方言」の7大方言が存在しています。
この中で注目する価値があるのが、呉方言に含まれる上海語と粤方言に含まれる広東語です。
上海語とは
まず上海語ですが、上海語と普通話の大きな違いは、上海語には「巻き舌」音がないことです。このため上海人も普通語の巻き舌音は苦手です。声調は五声あり、その形態も普通話のそれと全く違っています。
この上海語ですが、近年上海のめざましい発展により、一種ステータス的な意味合いを持つようになってきているようです。わざと上海語を使うことで、自分が上海人であることを誇示し、優越感に浸ると言うものです。例えるなら東京人が訛っている人をバカにするようなものでしょうか。
上海は多国籍企業の中国進出の一大拠点となっており、中国ビジネスとは切っても切れない都市になっています。その土地で使用されている言葉を多少でも身につけておくことは、上海人と交流する上でプラスに働くことがあるかもしれません。
広東語とは
次に広東語です。声調は九声あり、語彙的にも古中国語の語彙が多く残っていると言われています。文法も修飾辞が被修飾辞の後ろに付く例があるなど、普通語との差が大きい方言となっています。
この広東語ですが、在外華僑の多くが母語として使用しており、海外の中国コミュニティで重要な地位を占めているようです。
このような人たちと交流する場合、片言の広東語の知識があるだけでも、大きなプラスになることがあるかもしれません。
一昔前は広東語の教材らしいものはほとんどなかったようですが、最近は広東語学習教材も出てきているようですので、興味がある方は平行して学習してもいいかもしれません。