比較:介詞「朝」「向」「往」

方向を表す介詞“朝”“向”“往”は語義や用法が非常に近いので紛らわしいが,“朝”と“向”の基本的な意味はある方向を向くこと,“往”の基本的な意味は移動することである。なお,本項では同義となる“朝”“向”と“往”の比較に重点をおいている。“朝”と“向”の相違点については比較:介詞「朝」「向」を参照。

概要

介詞基本語義位置“着”の併用
ある方向を向く動詞の前単音節の方位詞を目的語とる場合は不可
動詞の前後介詞の目的語が2音節以上の場合
移動する不可

ある方向に向かって移動する

ある方向に向かって移動することを表すときは,“朝”“向”“往”のいずれでも用いられる。

例文和訳
前走前へ進む
前走
前走

移動しない場合

ある方向に向いているだけで移動しないときは,“往”を用いることはできない。

例文和訳
窗户南开窓は南向きだ
窗户南开
窗户南开

方向を明示しない場合

移動だけを表し,ある方向に向いていることを表さないときは,“朝”“向”を用いることはできない。

例文和訳
家寄信
家寄信
家寄信家に手紙を出す

人や物を指す名詞・代詞が目的語になる場合

“往”は必ず方位や場所を表す語を目的語にとり,人や物を指す名詞・代詞が単独で目的語になることはない。“朝”や“向”にはこのような制限がない。

例文和訳
我看わたしの方を見る
我看
我看

“往”を用いる場合は,人や物を指す名詞や代詞に“这儿”や“右边”のような方位や場所を表す語をつける。なお,“朝”や“向”も,目的語に方位や場所を表す語をつけることができる。

例文和訳
我这儿看わたしの方を見る
我这儿看
我这儿看

補語用法

“向”と“往”は“飞”“开”“寄”“通”“迁”などの動詞の後におき,介詞句補語として用いることができるが,“朝”にはこのような用法はない。

例文和訳
南方
南方南の方へ飛んで行く
南方