英語学習者の中国語学習法

本項からは、より具体的に英語学習者の中国語学習法の構築について考えてみたい。なお、学習法の構築については「中国語を始める前に」のシリーズで詳述しているように、学習者の性格や学習者の置かれている環境などに基づいて構築していくものなので、一概に「こうすればよい」というパッケージを提供することはできない。

本連載では、中国語に興味を持つ英語学習者が個々人に合った学習法を構築するためのヒントを提供してきたいと思う。

英語力維持に必要になる時間の算出

英語学習者が中国語を学ぶ場合、単に中国語を学ぶケースと比べ、考慮すべき要素が増える。その中でも最重要となるのが、英語力を維持するのに必要な時間をどのように計算するのか、という点である。

学習法構築において、時間的要素は重大である。どの程度の時間を確保することができるのか、という点は、学習法を構築する上で決定的な条件となるのだ。

英語学習者にとっては、英語力を維持する時間は中国語に優先することとなる。プラスワンとしての中国語を学ぶために、虎の子である英語力を減退させてしまっては元も子もないからだ。故に、英語力維持のための時間を差し引いたものが、中国語学習に当てられる時間となる。この点において、英語学習者は単に中国語を学ぶ中国語学習者に比べ不利になる。個人差はあるが、一般的に時間は限られたものであるからだ。

その所要時間を如何に算出するのかは、個人差があまりに大きいので、ここでは例を挙げることすら難しい。前回英語で中国語を学ぶ方法について紹介してきたが、これらの方法を活用することで、英語力維持に必要になる時間を出来る限り圧縮するところから始めることとなる。その上で、確保できた時間に応じて中国語学習法を組み立てていくのだ。

英語学習者のアドバンテージ

時間という点では英語学習に時間を割かざるを得ない分どうしても不利になるが、英語学習者の方が有利な点も存在する。中でも、英語の知識をそのまま応用できるものは英語学習者にとってボーナスのようなものである。

その最たる例が発音だ。中国語には、日本語にない音や存在するが認識はしない音が少なからず存在するが、それらの中には英語の発音に存在するものがある。「r」と「l」の区別などはその最たる例だろう。

一方、文法はあまり応用価値がない。中国語も基本文型はSVOであるところから、一部に中国語の文法は英語と同じと誤解している向きもあるが、同じなのはこれぐらいで、その他の要素は相違点の方が多い。例えば、名詞を形容する言葉は日本語と同様に名詞の前に置く。中国語では「的」が日本語の「の」相当の役割を果たすのだ。

そうは言っても基本文型が同じなのは大きなメリットである、と考えることもできるが、SVO文型は英語の基本中の基本であり、中学までちゃんと学校に通っていた日本人ならば、このくらいは習熟しているはずなので、特に英語学習者にとって有利になるものとは言えないだろう。

次項からは、これら英語知識の応用可能性について、もう一歩踏み込んで考えてみたい。

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