英語を学ばざるを得ないといっても、状況はマチマチである。これから中国語を始めようと思っている人もいれば、既に始めている人、そして中にはほとんどマスターしている人もいることと思う。
英語にどう向き合うのかという命題を考えるに当たって、当人の中国語習得段階が重要になるので、まずはここから始めてみたいと思う。
これから中国語を始めようと思っている人へ
まだ中国語を始めていないのならば、英語を先に学ぶ方が絶対に良い。なぜなら、中国語の学習を進めていくと、それに比例するかのごとく英語力が落ちていくからだ。
キャリア対策で中国語と英語を身に付けようと考えている者は、そのほとんどは大学生か大卒者であると思うが、少なくとも大学に入るだけの英語力を持っているのならば、これをみすみす捨ててしまうのはあまりにも惜しい。
言語能力は筋力と同様の特質を持つ。そう、使わないと落ちていくのだ。故に、中国語に傾注すると、英語力は驚くほど退化する。日本語は母語であるため抗退化力に優れるが、非母語である英語は本当にひとたまりもない。ちなみに母語であっても、「母語空間」から10年単位で遠ざかると、退化を実感するレベルまで衰える。
もともと英語が嫌いで中国語を始めようと思っている人には辛いだろうが、中国語の通訳や翻訳、或いは中国語教師のような中国語一本立ちキャリアでもない限り、英語からは逃げられないのだ。それが嫌なら中国語を諦めることを考えた方が良いだろう。
すでに中国語を始めている人へ
すでに中国語を始めている場合は、その進捗状況によって選択すべき対応が異なってくる。始めたばかりの段階ならば、上記のこれから始める場合に準じれば良い。逆に、一応のゴール(中検準一級レベル)に近いところまで来ているのならば、そのまま学習を続けて、中国語をマスターした後に英語に転じた方が良い。中国語一辺倒でこのレベルに到達しているのならば、どのみち英語力は破滅状態にあるからだ。
問題は、どっちつかずの、ある程度学習が進んだ段階にある場合だ。既に英語力が破壊されているのならば、開き直って中国語を続ければよいだろう。英語を先に学ぶのは、既存の英語力を惜しんでのことである。それどころか、中国語が中途半場な段階で英語に転向すると、それまで苦労して築き上げてきた中国語力を失うリスクが発生してしまう。
一方で、まだ英語力が破壊されていないのならば、思い切って英語に転向してもよい。ただし、英語に傾注すると、これまで学習してきた中国語は少なからず失うことになる。それが嫌なら、既習分を保持するだけの時間を中国語に割き、残りを英語に注ぎ込むという、非常に面倒な学習管理を行わなければならなくなる。
もちろん、英中を入れ替えて、中国語を優先するという方策もある。英語と中国語のいずれの方がゴールに近いのか、どちらを先にマスターしたいのかなど、当人の状況と意思に応じて、臨機応変に対応すれば良いだろう。