どちらかを優先するのではなく、英中二ヶ国語を同時並行させることはできないのか、という疑問を抱く方もいるかもしれない。ここでは、この点について少し考えてみたいと思う。
三歩進んで二歩下がる
結論から先に言えば、複数の外国語を同時に学ぶのは効率が悪い。不可能ではないが、1つずつ学ぶ方が確実で、且つ効率も良い。
同時学習がダメなのは、まず第一に語学力のマイナス成長の影響が大きくなるからだ。繰り返しになるが、外国語の習得は筋トレのようなものだ。語学力は使わないと落ちていく。いわゆる単語帳でボキャビルをやってみるとよく実感できるのだが、1ヶ月前に覚えた単語などはほとんど忘れているものである。これを阻止するには、繰り返し覚え直し、また使い続ける他ない。語学はそもそも「三歩進んで二歩下がる」なのだ。
同時学習がマズいのは、限りある学習時間が分散してしまうところにある。仮に1つの言語を「十歩進んで四歩下がる」ペースで習得していくとするのならば、2つになるとそれぞれ「五歩進んで三歩下がる」ペースになってしまうようなものだ。少し誇張した喩えだが、同時学習のデメリットを直感していただけると思う。
外国語漬け
また、外国語の効率よく習得するには、一定期間外国語漬けになる時間を作るのが効果的である。この期間は母語である日本語も排除して、完全に外国語空間を構築する。英語なら英語だけ、中国語なら中国語だけで過ごすのだ。
昨今はインターネットの普及もあって、このような環境を作るのが容易になっている。特に学生は長期休暇を利用することができるので、時間的な制約も小さい。
この外国語漬け学習法は二ヶ国語同時学習とはどうしてもウマが合わない。抗退化力に優れる母語にとってはなんてこともないのだが、学習中の外国語にとっては影響が大きい。このように、同時学習は学習法の選択にも影響を与えてしまうのだ。
二兎追うものは一兎も得ず
外国語の習得は容易なものではない。1つの言語ですら挫折する者の方が圧倒的に多いのだ。二ヶ国語ならばなおのことである。
これは単なるやる気の問題だけにはとどまらない。外国語の習得には最低限の絶対学習時間がどうしても必要になるのだ。仮に効果的な学習方法でムダのない効率的な習得プログラムを構築・実践できたとしても、1ヶ月や2ヶ月で身につくものではない。
具体的にどの程度の時間が必要になるのかは断言できないが、少なくとも2000時間ぐらいは必要になると考えた方が良い。個人差もあるだろうし、どの程度の無駄が発生するのかにもよると思うが、中級修了レベルをとりあえずのゴールとして考えるのならば、どうやってもこの程度の時間は必要になるだろう。
故に、たとえ本人がやる気満々であったとしても、二ヶ国語同時学習は時間切れでどちらも中途半端な状態で終わってしまう可能性が高くなるのだ。だったら、まずは1つの言語に集中した方が良い。たとえ二ヶ国語マスターにはなれなくとも、外国語1つできれば、それでも大きなアドバンテージを得ることになる。もう一つの言語は、気長に学習を続ければよいのだ。
非同時学習のメリット
また、非同時学習には同時学習にはないメリットもある。それは、先に習得した言語で2つ目の外国語を学ぶという方法を採用できることだ。習得した外国語だけでもう一つの言語を学ぶことはかえって効率が悪くなるのだが、部分的にこのやり方を採用することで、先に習得した言語の保持を図りつつ、且つ2つ目の言語を学習することができる。
この方法が通用するのは文法やボキャビルに限られてくるが、それでも効果は十分に期待できる。まさに一挙両得であろう。