コンテンツ・機能情報
コンテンツ一覧は「中国語電子辞書比較表」を、標準機種・上位機種及び前モデルとの差分についてはキヤノン ワードタンク 歴代中国語モデルまとめを参照のこと。
解説
前代未聞の一年遅れ、前モデルから3年待ちとなった伝説のモデルがついにリリースされた。
ここに注目!①……「驚愕の小学館×講談社 中日日中辞典コラボ」(上位機種)
中日日中辞典で人気を二分する小学館と講談社。この両者をまとめて収録し、両辞典の引き比べが可能となった。ついに「メインの中日日中辞典は一社から選択」、という単一辞典時代に終止符を打ったのだ。
ここに注目!②……「標準機種にも『中日大辞典』収録」
これまで上位機種の象徴的コンテンツであった、愛知大学の『中日大辞典』が標準機種としては初めて収録されている。
ここに注目!③……「発音・リスニング学習機能が充実した発音・音声関連機能」
発音・音声関連機能は相変わらず充実している。ネイティブの発音に合わせてテキストが表示される「オーディオブック機能」や、ディクテーション学習用の「ディクテーション機能」、外部から音源や動画を取り込んで再生する「メディアプレーヤー機能」、そして自分の発音を録音してネイティブ発音との聞き比べができる「発音比較機能」。電子辞書と言うよりも、中国語学習機と言ったほうが良いかもしれない。
ここに注目!④……「新語コンテンツ拡充」
新語コンテンツの収録語彙数でライバルのカシオエクスワードに遅れをとっていたが、今回のメジャーアップグレードでエクスワードが収録していた新語コンテンツをすべて収録し、語彙数で一気に逆転した。
ここに注目!⑤……「中国語検定対策コンテンツ追加」
新たにアルクの『キクタン中国語』シリーズを収録。同じく新収録のアルク『ゼロから始めて中国語検定準4級に合格する』と合わせて、中国語検定対策コンテンツが一気に追加された。
ここに注目!⑥……「豊富な中国語辞典コンテンツ」
前作に引き続きメインの中日日中辞典の他、東方書店の『中国語文法用例辞典』と講談社の『中国語類義語活用辞典』を収録している。中国で最も普及している国語辞典『現代漢語詞典』も引き続き収録。オックスフォード英中・中英辞典もバージョンアップし、収録語彙数が一気に増加している。
ここに注目!⑦……「強力な検索機能」
今やスタンダードである「手書き入力検索」はもちろんのこと、新たに「全文検索」が追加された。
総括
期待のワードタンク新バージョンだったが、そのパフォーマンスは「まさか」の一言。小学館と講談社の中日・日中辞典ダブル収録は、まさに「その手があったのか」と唸らずにはいられなかった。中国語学習という観点から言っても、小学館と講談社の中日日中辞典を引き比べることができるのは非常に有意義である。例文も充実するので、微妙な語感を身につけるにもプラスとなるであろう。
今作の最大の売りとなったこの機能だが、残念ながら上位機種限定である。これまで中国語モデルにおいては、上位機種と標準機種の差は中上級者向けのコンテンツの有無が中心だった。例えば愛知大学の『中日大辞典』や一部機能型辞書である。
逆に標準機種には上位機種にない初心者向けの学習コンテンツが収録されることもあり、まずは標準機種を購入して、中上級レベルに到達したら、改めて最新の電子辞書を購入するという選択肢も非常に現実的だった。
ところが、2012年版のワードタンクでは、初中級者にとっても非常に有意義な存在である二大中日日中辞典同時検索は上位機種限定である。加えて上位機種にこれまでは標準機種専用コンテンツだった入門初級レベルの学習コンテンツが収録される一方、これまで上位機種の象徴的存在であった『中日大辞典』が標準機種に収録されるなど、入門初級者向けの標準機種、初級から上級までカバーする上位機種、というこれまでの住み分けが崩され、真の意味で標準・上位と区分けされた感が強くなっている。
このため、実勢価格次第(価格差はおよそ一万円前後になると見られる)でもあるが、可能なかぎり上位機種を選択するのが望ましいであろう。特にワードタンクは必ずしも毎年新機種がリリースされるとは限らず、次は二年後三年後という可能性があるからだ。
逆に言えば、ダブル収録以外のコンテンツについては、両者の差はかなり小さくなっている。片方あれば良い、ということなら、標準機種でも従来の上位機種に近いコンテンツを堪能できることになる。
その他のコンテンツについては、新語コンテンツが一気に拡充されたのが印象深い。新語コンテンツは語彙数でカシオに遅れをとっていたが、今回はカシオが収録していた新語コンテンツを一気に収録してしまうという荒業を展開、あっさりと逆転してしまった。
学習コンテンツでは中国語検定対策コンテンツが追加されている。『キクタン中国語』を収録しているキヤノンと中国語バージョンなのになぜか英語のキクタンシリーズしか収録していないカシオ。中国語モデルに対する両社の意気込みの差を感じてしまう。
英中中英コンテンツは『オックスフォード英中・中英辞典』が第4版にアップデートされ、収録語彙数が倍増しているが、こちらについてはカシオの英中中英辞書コンテンツに比べ、収録語彙数でまだ大きな差を残しているのが残念なところである。
コンテンツ的に一つ注意すべき点として、中上級者向けの愛知大学『中日大辞典』の音声が削除されている。音声が必要になるのは実質的に入門からせいぜい中級までであり、中日辞典の音声コンテンツで十分足りるとの判断なのであろう。
機能面では相変わらず発音音声関連の機能が素晴らしい。入門~中級レベルの学習者にとって有用な機能が満載である。ついでにカラー化に合わせて動画の再生も可能となっている。
今回のアップグレードで、コンテンツの差をジワリジワリと縮めてきたカシオを再び突き放したと言って良いだろう。ハード面で大きな欠点がなければ中国語電子辞書の歴史に残る名機となるのではないだろうか。
使用上の問題について(※追記:2012/5/29)
案の定、というか、コンテンツ以外のところで問題を指摘されているようだ。ここではこれらの問題について評者の実感を付記しておく。
検索のレスポンス
検索のレスポンスが悪いというユーザの反応があるが、これは事実だ。実感としてはワンテンポ遅い感じがする。喩えるならば、少し反応の悪いブラウザによるインターネット検索のような感じだ。
サクサク感がないので、スピードを求める人、気の短い人には向かないかもしれない。
フォント
日本語のフォント表示がおかしい、という意見がある。確かに、メニューなどの日本語表記が微妙である。これは、おそらく採用しているフォントとフォントサイズの調整が悪かったのであろう。これはWEBサイトを制作しているのでわかるのだが、フォントによっては、特定のフォントサイズで表示がおかしくなる。これは、はっきり言って初歩的なミスだと思う。
歴史的に見て常にコンセプトやコンテンツで先行するワードタンクだが、作り込みが甘いケースが散見される。3年ぶりとなった今作だが、かつてバックライトがないという初歩的な設計ミスで低評価を受けた90シリーズの再現を見る思いだ。
コンテンツ的には素晴らしいので、上記の問題点が許容できるのならばよいのだが、時間が許すならば、修正バージョンを待つ、という選択肢もある。早ければ2013年の春、遅くとも2014年にはリリースされると思うのだが……
とりあえず、短気な方は競合のエクスワードXD-D7300の方が精神衛生上無難かもしれない。
購入のヒント
電子辞書は語学への初期投資のなかで、比較的大きな割合を占める投資項目となる。となれば、少しでも安く買いたいと思うのが人情というもの。次のページで中国語電子辞書を安く買うための手引きを公開しているので参照のこと。
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