【比較検証レポート】最強の中国語電子辞書決定戦 2011年の陣 ~ ワードタンクV923 VS エクスワードXD-B7300

序文

キヤノンワードタンクの2011年バージョン「Zシリーズ」の開発が遅れている。2011年2月の予定だったのが、執筆時(3月下旬)時点で2011年夏以降というアナウンスになっている。そこで、2011年春の段階で購入可能なモデルで、改めて比較レポートを行なうことにした。

本レポートでは、中国語電子辞書市場で覇を競うキヤノンとカシオより、2011年春の時点で購入できるキヤノンの最新モデル上位機種V923(2009年発売)とカシオの2011年中国語モデル(カシオは上位標準の区別なし)XD-B7300を対象として、比較対比する。

※追記:キヤノンワードタンク「Zシリーズ」の発売は2012年3月末まで再度延期された。よって、本稿は2011年版(2011年購入可能なモデル)の比較レポートとなる。

本項では両社電子辞書の比較に重点を置いてまとめている。それぞれの電子辞書の機能や評価についてはそれぞれ個別に評価しているので、別途参照のこと。

収録辞書コンテンツは、中国語電子辞書比較表を参照のこと。

目次

評価について

本レポートではキヤノンの2009年版上位機種「wordtank V923」とカシオの2011年版「Ex-word XD-B7300」について、収録コンテンツを中心に、項目別に比較してポイントを与える。

評価対象は基本的に中国語コンテンツ及び中国語学習に関連する機能に限定する。また、数値化が難しい項目は評価の対象外とする。例えば殻の強度や手書き入力の精度などである。

評価方法は当該項目の重要度に応じて点数を配分し、それぞれに対しそれを上限として採点する絶対評価方式を取る。

ただし、使用者の中国語レベルや用途によって重視すべきポイントは変わる。総合スコアはあくまで最大公約数でしかないことをここに付記する。

1.総合辞典

配分スコア:100

基本コンテンツ。愛知大学編纂の日本最大中国語辞典『中日大辞典 増訂第二版』プラス大型中日辞典・日中辞典で構成される。

中日日中辞典については、キヤノンは講談社を、カシオは小学館を採用している。いずれも人気の高い中国語辞典で、これから中国語を学ぶ初心者の場合は気にする必要はない。一方、すでに学習を始めている既習者で、どちらかの出版社の辞典に慣れ親しんでいる場合は、その出版社の辞典を収録している電子辞書を選んでもよい。無論、気にしないのであれば、出版社で選ぶ必要はない。

なお、電子辞書の売りの一つである収録音声数ではキヤノンが圧倒している。ワードタンクは『中日大辞典 増訂第二版』の発音音声も収録しているためである。

ただし、音声コンテンツが重要になるのは入門から初級レベルであることを考えると、上級者向けの辞書コンテンツである『中日大辞典 増訂第二版』の音声コンテンツの重要性は高くない。現に、次代バージョンとなる「Zシリーズ」では『中日大辞典 増訂第二版』の音声コンテンツは削除されている。

採点は、双方突出した点がなく、五分とした。配点が双方60点となっているのは、開発が遅れているキヤノンの次代バージョン「Zシリーズ」で、この分野で大きな突破があり、それを反映させているためである。本件について詳しくは2012年版の比較レポートを参照していただきたい。

配点

キヤノン
60
カシオ
60

2.中中辞書

配分スコア:50

中国の国語辞典である。中国人向けに編纂された辞書だが、外国人の中国語学習用としても有意義であり、中上級者にとっては重要なコンテンツとなる。

2009年以降、中中辞書は電子辞書の標準装備となっているが、総合辞典と同じく、キヤノンとカシオでは異なる出版社の辞典を採用している。ワードタンクは国民的な中国国語辞典である『現代漢語詞典』(収録語彙数約6.2万語)を、エクスワードは中国最大級の大型国語辞典『現代漢語大詞典』(収録語彙数約10万語)を収録している。

単純に語彙数を比較すれば、カシオに利がある。もっとも、中国語学習用としては中国で広く使われている『現代漢語詞典』でも十分であることを付記しておく。

ここでは、語彙数が大きい点を評価して、カシオに軍配を上げる。

配点

キヤノン
40
カシオ
50

3.機能型辞書

配分スコア:50

機能型辞書とは、中国語電子辞書研究所では文法語法や類義語など、中国語学習上特定の分野に特化した中国語辞書と定義している。

この分野ではキヤノンが先行しており、『中国語文法用例辞典』『中国語類義語活用辞典』を収録している。

カシオはこの分野で大きく出遅れており、2011年版でようやく初心者向けの文法学習テキスト『文法中心 ゼロから始める中国語』を収録するに至った。このコンテンツは厳密には辞書ではないが、文法参考書としても使えるところから、機能型辞書に準じるコンテンツとして評価している

配点

キヤノン
50
カシオ
10

4.新語辞典

配分スコア:30

電子辞書は出版済みの書籍を再収録するので、構造的に新語コンテンツに弱い。だが、ネットが普及するにつれ、ネット発の新語が社会的な認知を得るケースが増えており、その重要性は日増しに強くなっている。

新語コンテンツではカシオが2コンテンツ、キヤノンが1コンテンツと、カシオが優位に立っている。キヤノンの次代バージョンZ900では逆転するのだが、V923ではカシオに及ばない。

配点

キヤノン
10
カシオ
30

5.英中中英辞書

配分スコア:20

キヤノンは『オックスフォード 英中・中英辞典』を、カシオは中国の出版社の編纂による『漢英大辞典』『英漢大詞典』を収録している。語彙数ではカシオが圧倒している。

配点

キヤノン
10
カシオ
20

6.専門辞書

配分スコア:20

特定の専門分野に特化した辞書。パソコン辞書や固有名詞辞典などである。この分野ではカシオが圧倒している。

配点

キヤノン
カシオ
20

7.会話

配分スコア:20

キヤノンは会話学習テキスト1コンテンツ、カシオは旅行会話3コンテンツとなっている。収録項目数ではカシオが二倍弱となる。

配点

キヤノン
10
カシオ
20

8.資格対策

配分スコア:20

中国語資格対策コンテンツ。キヤノンZシリーズが業界初収録となるので、2009年版のワードタンクは未収録である。

配点

キヤノン
カシオ

9.方言

配分スコア:10

中国語普通語(標準語)学習用としては必要のないコンテンツだが、旅行や出向で地方滞在する場合は役に立つ。

現在方言コンテンツを収録しているのはカシオのみ。キヤノンは2008年版で業界初収録を達成したが、2009年版では削除された。

配点

キヤノン
カシオ
10

10.その他

配分スコア:10

上記以外の中国語コンテンツとして、キヤノンは『日本の文化としきたり事典(日中対訳版)』を、カシオは「ピンイントレーナー」というピンイン学習コンテンツを収録されている。

配点

キヤノン
カシオ

11.学習補助機能

配分スコア:50

ワードタンクは中国語学習を補助する機能が充実しており、テキストビューア機能、単語帳機能、MP3プレーヤー、レコーダー機能、発音比較機能、ディクテーション機能など、特に発音を中心とした多彩且つ強力な学習サポート機能を実装している。

この分野については長年キヤノンがカシオを大きくリードしており、カシオはその差を埋められないでいる。

配点

キヤノン
50
カシオ

集計

項目
(スコア)
総合辞典
(100)
中中
(50)
機能
(50)
新語
(30)
英中中英
(20)
専門
(20)
会話
(20)
資格
(20)
方言
(10)
その他
(10)
学習
(50)
合計(380)
V923 60 40 50 10 10 5 10 0 0 5 50 240
XD-B7300 60 50 10 30 20 20 20 0 10 5 5 230

総括

2009年版のワードタンクと2011年版のエクスワードという2年分のハンディに関わらず、スコア上はキヤノンがカシオを凌いでいるのは驚きである。これはひとえにキヤノンの中国語電子辞書にかける意気込みを反映しているのであろう。

キヤノンがスコアを稼いだのが機能型辞典と学習補助機能の項目である。いずれも配点スコアが高く、この2項目で85点差をつけている。

逆に言えば、その他のコンテンツではカシオがキヤノンを凌いでおり、項目毎の勝敗数ではカシオが6勝2敗3分けと圧倒しているところにも注目である。

要は、キヤノンは配分スコアの高い2項目で圧勝して総合スコアで勝利したのだ。ただ、この2項目のうち学習補助機能はパソコンでも代用できるため、純粋に収録コンテンツで比較するのならば、カシオの方が優っているとも解釈できる。

また、評価の対象にはなっていないが、XD-B7300はカラー、V923はモノクロである点にも注意する必要がある。カラーにこだわるなら選択の余地はないであろう。

このため、本年の中国語電子辞書市場はカシオがキヤノンを圧倒するのではないか、と予想される。

購入のヒント

現実に電子辞書を選択する場合、価格も重要な項目となる。次のページで各社の中国語電子辞書を安く買うための手引きを公開しているので比較検討の材料にしていただきたい。

「中国語電子辞書購入の手引き」

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