2007年にはカシオが中国語手書き入力機能を搭載した「XD-GW7350」と「XD-SW7300」をリリースした。手書き入力機能の欠如という中国語電子辞書としては致命的な欠点を克服し、キヤノンとの差を一歩縮めることに成功したが、翌2008年度にはまた徹底的な打撃を受けることとなる。
キヤノン沈黙の2007年が明けた2008年春、キヤノンが満を持してリリースしたのが「wordtank V903」であった。先代が抱えていた致命的欠陥であったバックライトの問題を解消。また、初心者向けモデルとエキスパート向けモデルの二層型ラインアップから、すべての機能を統合した一機種戦略に転換、V90とG90が統合された、最強の電子辞書が誕生したのである。
コンテンツ面では上海語・広東語・台湾語という方言コンテンツを追加し、機能面でもディクテーションやシャドーイングに利用できるオーディオブック機能を追加するなど、中国語学習機としての機能が大幅に強化された。
一方のカシオエクスワード「XD-GP7350」「XD-SP7300」は、事実上マイナーチェンジに終わり、2007年度で縮小したその差はまた大きく広がることになってしまった。しかも、この年、長く沈黙していた電子辞書市場のライバル、シャープのパピルスが、中国語手書き入力機能を搭載した「PW-LT220」を投入。上級者向けの愛知大学編纂『中日大辞典』は収録しないものの、初心者向けのコンテンツが充実したモデルで、初心者層にターゲットを絞った戦略で打って出てきた。このシャープパピルスの新中国語モデルは、初心者向け機能型辞典である朝日出版社の『はじめての中国語学習辞典』や、中国語通信教育講座の『ゼロからカンタン中国語』を収録するなど、まさにマーケティングの勝利と言って良いモデルとなった。哀れなのがカシオ。上級者・エキスパート向けではキヤノンに遠く及ばず、初心者向けでもシャープに比べ遜色を見せてしまった。まさにカシオ屈辱の2008年であった。