中国語なぞなぞのなぞ

中国語にも日本語のなぞなぞに相当するものとして“谜语”なるものがあります。日本語のなぞなぞと同じパターンのものも少なくないとは思いますが、文字の国らしく、漢字を分解したり複数の文字から一字を形成させたりと、漢字の特性を十二分に発揮したなぞなぞが多数存在します。

中には外国人は言うまでもなく、中国人でもちょっとやそっとでは解けないなぞなぞも少なくありません。例えば“冠盖満京华”。答えは歴史人物「管仲」(春秋時代の斉の宰相)。どうやってこの答えが導き出されるのか一歩一歩考えてみましょう。

まず「管仲」の字を分解します。“管”は“竹”と“官”に分けられ、“竹”はさらに二つの“个”に分けられます。“仲”は“人”と“中”ですね。“官”“个”“个”“人”“中”を並べ替え“个个官中人”とすると、“冠盖満京华”と対句になります。日本語にすると「冠(官僚を喩えた表現)が京に溢れる。皆宮中の者である。」となる訳です。

もう一ついきましょう。お題は“天作丝丝道难行,含泪挥手送君行。”。詩の一節みたいですが、これもれっきとしたなぞなぞです。これがわかる日本人は中国語の鬼才でしょう。答えは“露禽”古中国語における鶴の一種の別名です。これも順を追って考えてみます。

“天作丝丝道难行”は雨が降って道の状態が悪いことを言っているところから“雨路”、“含泪挥手送君行”は別れの場面を詠んでいるところから“人離”となり、それぞれ一字に合成すると“露禽”となります。こんななぞなぞを解ける人がいるのかどうかは知りませんが……

なぞ解きの方法

中国語のなぞなぞを解く方法には主に「会意法」「反射法」「借扣法」「側扣法」「分扣法」「溯源法」「加法」「減法」「加減法」「離底法」「離面法」「象形法」「象画法」「直諧法」「間諧法」「比較法」「擬人法」「擬物法」「問答法」「運典法」「排除法」の21の方法があります。こうやって列挙すると何か厳かしく感じるかもしれませんが、基本的には日本語のなぞなぞと同じだと思います。

例えば「減法」。“池中没有水,地上没有泥”を漢字一字で解くと、答えは“也”。“池”に“水”(さんずい)がなく、“地”に泥(土へん)がなければ“也”となる訳です。これなんかはわりとわかりやすいのではないでしょうか。

「比較法」や「擬人法」は日本語で読んだままのものです。また、「象画法」はイメージから、「会意法」は全体の意味から答えを導き出す方法です。例えば“脸上长鈎子,头角挂扇子。四根粗柱子,一条小辫子。”答えは“象”。日本語にすると「顔にホックがあり、頭に扇子がかかり、四本の太い柱があり、一本の小さなおさげがある。」イメージのままですね。

答えの型

中国語のなぞなぞで特徴的なのが謎格と呼ばれる、一種の答えの型のようなものです。謎格は答えに一定の要求を加えます。例えば“展翼格”と呼ばれる謎格は答えが三字以上、真ん中の一字は左右に分離して二文字として読み、且つお題と整合性を持たなければなりません。

これも例を出したほうがわかりやすいですね。例えばお題“阴阳歴合订本”で答えは“説明書”。答えの真ん中の文字“明”は“日”と“月”に分割することができ、且つお題の“陰陽”と対を成します。これが“展翼格”です。

謎格の種類は実に100種類以上存在し、複雑を極めます。とても私の手に負えるものではないのでここでは深入りはしません。

謎語の基本用語には先に述べた“谜格”の他に“谜面”(お題)“谜底”(答え)“谜目”(答えの範囲 ※例:「答えは成語」等)“谜号”(雅名※灯謎上級者が用いる)等があります。

灯謎

この謎語の分流として生まれたのが“灯謎”です。字で書いてのごとく灯篭やちょうちんの上になぞなぞを書いて当てさせる遊びのことで、元宵節の“灯会”(飾り灯篭を見る催し)で灯篭に謎語を書いて娯楽としたところから生まれました。灯謎はその後謎語から独立して独自のルールを形成し、謎語の支流として独立しています。灯謎=謎語ではないことだけ覚えておいてください。

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Time:
2013-09-05 Last modified: 2013-09-05