ローマ字だけ見れば「エ」ですが、かの「e」はこの「エ」とはまったくの別物。オマケに前後に来る音によってまったく別の音になってしまう日本人泣かせのあいまいさ。中国語を始めた人が一番初めに躓く音はおそらくこれでしょう。だって、発音の学習は母音から始まるのがセオリーですから。
そのあいまいさ故に各種テキストの解説もバリエーションが豊富で(笑)、その分余計に学習者を戸惑わせているところも見受けられます。本項ではそんな「e」の発音のコツについて解説したと思います。
一般的な解説
例のごとくまずは一般的な解説を見てみます。
解説パターン1:口を軽く自然に開いて、のどの奥で「オ」と言う。
解説パターン2:日本語の「エ」の口の形で、のどの奥の方で「オ」と言う。
解説パターン3:「o」の発音から唇のまるめをとり、口をやや左右に開き、のどの奥で「ウ」と言うつもりで発音する。
解説パターン4:日本語の「イ」の口の形で、のどの奥の方で「オ」と発音する。
この他にもまだまだ多様な解説があるようです。のどの奥の方で発音する日本語は「オ」であったり「ウ」であったり「ゥア」であったりします。口の形も軽く自然に開いて、という「あいまいな」説明から日本語の「エ」の口の形で、と断定しているものまでありますが、早い話、あいまいなのです。まぁもともと音自体があいまいですし、日本語にない音ですから、日本語の発音で解説すること自体に無理があるのかもしれませんね。
とは言うものの、日本人である以上、やはり日本語の発音の音を参考として出してもらわないわけにもいかない訳で、本項でも可能な限り日本語の音を参考として提示します。ただ、あくまで参考ですから、最後は中国語の音そのものを耳に焼きつけてください。究極的にはそれが一番の近道であることをお忘れなく。
唇の形
で、実際のところ口の形はどうなのか、というと、ぶっちゃけた話、これは意識しなくても構いません。「ポカン~」と口を少し開けてぼぅっとしている、限りなく力が入っていない時の口の形なので、かえって意識しない方が良いでしょう。「i」とか「u」とか「ü」のように唇の形が音に大きな影響を与える発音ではないので、気にする必要はありません。
意識しないのはかえって難しい、という方は、便宜的に日本語の「エ」の形ということにしておいてください。ポイントはリラックスすること。力を入れずに軽く開いておけばいいでしょう。
リラックスできていれば上下の歯は閉じず、指一本ぐらい開いているはずです。これも別に厳密に何ミリ開いているとかいうものではなく、適度に開いていればいいのです。
とにかく、コツは気にしないこと。「e」の発音は唇なんでどうでもいいんですよ。
舌の位置
舌の位置も別にそれほど意識する必要はありません。敢えて言うのなら日本語の「オ」の位置にあるとでも理解しておいてください。舌先が前歯付近にいなければいいだけの話です。
発音位置と発声音
「e」の発音のポイントは発音の位置と発声音にあります。まず発音の位置はのどの奥の方。発音テキストの説明にはいろいろなパターンがありますが、これだけは共通しています。
そしてそののどの奥で発する音は、「オ」でも「ウ」でもどちらでも構いません。どちらで発声しても中国語の「e」の音になるはずです。ちゃんとのどの奥で発声していれば。発音している本人の耳には多少別の音に聞こえるかもしれませんが、中国人に聞かせればどちらも「e」の音になります。
「ゥア」は耳に聞こえてくる音に基づいて表記したものでしょう。無理やりでも日本語でその音を表せ、と言われたら、大体こんな表記になります。
コツ
コツはとにかくのどの奥で発声するという感覚を掴むこと。日本語には存在しないのでわかりにくいですが、一度感覚を掴んでしまえば簡単なものです。
感覚がつかめない、という方はのどの奥を緊張させて発音してみてください。具体的に言えば、下あごから喉にかけての筋肉に力を入れます。ちょうど下あごと首の境目あたりですか。そこに力を入れてみてください。
日本語ではつかわない部分の筋肉なので、繰り返し練習していると疲れると思います。逆に言えば、疲労を感じるぐらいの方が正しいということになります。
音のブレ
「e」はあいまいな音で、それにくっつく発音の影響を大きく受けます。
複母音「ei」の「e」は後続する「i」に引っ張られて発音の位置が前方へ一気にずれ込み、日本語の「エ」の音になります。同じく「ie」の「e」も「i」の影響を受け前方へずれ込み、日本語の「エ」に近い音になります。
また、後ろに「n」がくっついて「en」となると、「n」の音の影響を受けて、やはり発音の位置が前方へずれます。例えば、"熱(re)"と"人(ren)"の「e」はほとんど別物と言っていいでしょう。"熱(re)"は日本語で表すのが非常に難しい音ですが敢えてカタカナで表すのなら"ルゥ゙ァ"(ウは濁音っぽく)、後者の"人(ren)"は限りなく「レン」に近い音になります。
入門レベルにおいては、他の音とセットになった「e」に遭遇したら、かならずその音を模範音声で確認する癖をつけておくようにしてください。