中国語学習の最適化(下):学習方法カスタマイズ論

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項目限定集中学習

各項目がそれぞれに相関性を持っており、そのバランスが重要ということなら、それらを同時並行して行っていけばいいのでしょうか。

確かにそれでも構いませんが、実践上では、それはあまり現実的ではありません。

1日8時間を学習に当てることができるような場合は可能でしょうが、現実には1日1~2時間の学習時間を確保できれば万々歳という学習者が大半を占めているものと思われます。そんな中であれもこれも......というのは贅沢な話ではないでしょうか。

ただ、これはご心配には及びません。並行して進める必要性はまったくありませんから。一定期間(例えば1ヶ月)どれかの項目を集中的に行い、レベルの上昇に応じて順次学習項目を切り替えていく方法でもまったく問題ありません。

この方法は比較的短期間で上達を実感できることもあるおすすめの方法です。一つ二つの項目が全体の足を引っ張るということは、その項目が補われれば中国語力が飛躍するということも意味します。項目限定集中学習を続けていると、そのような「飛躍」を一度ならず実感することができるでしょう。

この感覚は外国語を学ぶものにとってはこの上ない喜びです。これが学習意欲を刺激し、さらなる精進への糧となるのです。

また、如何に相性が良く効果的な学習法であっても、同じメソッドを続けていくと、脳への刺激が小さくなっていきます。

要注意なのは、「飽きたな」と感じたときは、既にそのメソッドによる中国語能力向上の効果は、かなり減退してきている可能性が高いということです。

人は同じ事を繰り返すと、その行動から感じる刺激は低下していきます。これは中国語学習についても当てはまり、同メソッドを継続し続けると、脳に対する刺激が低下していくのです。

この問題を回避する手段として、お気に入りの学習法を軸に複数の学習法をローテーションさせるという方法があります。いくつ準備するのか、どれだけの期間で変更するのか、という具体的な話は個人差があまりに大きいので、一概に言うことはできません。学習者それぞれでいろいろ試していくしかないものと思われます。

学習方法と学習効果は一対一の関係ではない

中国語の学習方法は多種多様、細かく分類すればごまんとあるでしょうが、それは必ずしも一つの項目・要素だけに効果があるという訳ではなく、いくつにもまたがって効果を持ち、且つそれぞれの項目・要素における学習効果の大小が異なっているのが普通です。

例えば、リピーティングという学習方法があります。これは一応はリスニング学習に分類されるものですが、聞いたものを口に出して繰り返すということから、スピーキングに対しても一定の学習効果があります。

また、口から出すということは発音練習にも通じ、合わせて語彙も覚えるならば語彙学習にもなる訳です。

これ以外の学習法についても程度の差こそあれ同じです。また、同じ学習法でも学習に利用するテキストや学習ソースの選択によっても大きな相違が出てきます。同じリスニングでもリスニングソースを会話文にすればスピーキングを念頭に置いたものになるのは言うまでもないでしょう。

学習プランはこれらを踏まえて構築していくことになります。一度構築した学習法を永遠と継続しつつけるのではなく、状況にあわせて常に変更を加えることで、より高い学習効果を追求するのです。

個人的要素を加味する

学習者個々人に最適化された学習法の構築のためには、上述のような各学習メソッドの検討のみならず、さらに学習者個々の個人的要素について分析を加える必要があります。

この点については「中国語フィージビリティスタディ」でも言及したので繰り返しになりますが、中国医学を志して中国語を学ぶ人と、キャリアアップとして中国語を学ぶ人では重点が異なってきます。通訳や翻訳のような外国語専門職を志す人もいれば、夫の中国赴任で中国に「連行」されてきた主婦というケースもあるでしょう。

単に日常会話ができればよし、とする人と、通訳になりたい、という人では要求されるレベルに天地の開きがあります。前者なら「つまらない」と感じる学習方法はすべて排除して学習プランを組み立てることだって可能ですが、後者では好き嫌いよりも学習の効果効率を優先して学習プランを構築しなければなりません。

また、これも同じく「語学と性格と相性と 性善説で考える学習法プランニング」で詳述していますが、学習者個人の性格、好き嫌い、学習方法との相性も重要です。

たとえどんなに学習効果の高い学習法であっても、性が合わないと学習効果は半減されてしまいますし、下手をすると挫折の原因となってしまいます。

学習法は一つではありません。外国語における特定の分野(例えばリスニングやスピーキング等)を伸ばすための方法はいくつもあるのですから、その中から相性の合うものを選んでやれば良いのです。

また、同じ学習方法でも、実践上において多少の工夫を加えることで、学習ストレスを軽減することもできます。あくまでも自分のとって最適な学習法に作り変えていけば良いのです。

学習者のレベルは日に日に変化していきます。その時にはその学習者にとって最良だった学習法も、レベルの変化に従って学習効果が逓減してきます。

加えて「学習環境と時間と金と 環境的要素を織り込んだ学習法プランニング」で詳述しているように、同じレベル、同じ嗜好の学習者であっても、それぞれが置かれている環境、経済力、時間的制約によって、学習方法は大きく変化します。

経済力があればより大きな資金を投下することで学習効果を高めることが可能です。また、時間的制約が少なければ少ないほど選択できる学習法に幅が出てきます。

学習者それぞれの学習目的と性格、相性、経済的時間的制約などに基づいて、常に学習方法をカスタマイズしていく......これが学習方法の最適化です。

次項からは入門初級レベルから上級レベルまで、どの時点でどの分野が学習の重点になるのかというポイントについてまとめていきたいと思います。