書籍から電子テキストへの過渡期
パソコン・インターネットの優位性については前項で言及したとおりですが、ではパソコン・インターネットだけで学習を進めれば良いのかというと、それはそれで問題があります。中でも特に大きな支障となるのが教材の種類と量です。
現在は紙のテキストから電子テキストへの移行が始まったばかりの過渡期に位置し、多くのテキストはまだ従来の書籍の形態で発行されています。
いずれは電子テキストが主流になると予想されますが、少なくとも現状では電子テキストは限られた量しか供給されていません。
そもそも中国語のテキスト自体、一昔前に比べれば多くはなったと言うものの、英語のそれと比べれば少ないものです。その上で電子テキスト、となれば、その量が如何に限られてくるか容易に想像がつくものでしょう。
もちろん、現状でも優れた電子テキストは存在していますが、選択の余地はあまり大きくありません。数多くの優れた書籍テキストを利用できなくなるのはあまりも惜しいというものです。
従って、現状ではパソコン・インターネットと書籍を混合して組み立てるハイブリッド型の学習プランを構築することになるのが現実的な選択になるのではないでしょうか。
パソコン・インターネット学習の優位性と欠点
ハイブリッド型の学習プランを構築するとなると、次に問題になるのがその比率と組み合わせ方です。
パソコン・インターネットをメインとするか、それとも従来の書籍テキストをメインとするか。または、単語帳はパソコンで作る、というように、部分的にパソコンを取り入れるのか......これは学習者の嗜好によって千差万別となるので、ここで一概に申し上げることはできません。
重要な点を挙げるとするのなら、パソコンにせよ書籍にせよ、それぞれに利点と欠点があるので、それを前提として使い分けていく、という点です。
例えば、パソコンの強みはデータ処理能力が強大であるところにあります。この能力を十分に活かせるのが単語帳です。難易度や頻出度順に並び替えたり、忘れた単語だけ取り出したりすることができますし、辞書ソフトと連携して、ワンクリックで単語帳に追加させることができます。
このような機能は、従来の紙ベースの単語帳ではひっくり返っても実現できません。単語は雪ダルマ状に増えていきますから、時間が経過すればするほど、パソコンの優位性が際立っていきます。
この例に代表されるように、パソコンは紙に比べ多くの点で優位を占めているのですが、欠点もあります。その代表的な例が字体の記憶です。
パソコンが普及してからというもの、字を書く機会が減ったので、いざ字を書こうとすると思い出せないことがままありますが、これは外国語である中国語でも同じです。というか、母語である日本語ですら思い出せないのですから、外国語である中国語ならなおのことでしょう。
日本語の漢字と同じ字体であるもの、日本語の字体よりも簡略化されているものなども少なくありませんが、パソコン一辺倒で書く機会が減ると、いざというときに漢字が出てこないのは事実です。
紙ベースの学習では何かにつけて書く機会が多くなるので、日ごろの学習の中で字体を覚えていくことができるのですが、パソコンの場合、意識して書く機会を設けないと、なかなか字体を覚えることができなくなります。
パソコンをメインにして学習を進める場合は、この点に留意する必要があるでしょう。
重要なのは、それぞれの特性に留意して、利点を最大限に利用するのと同時に、その欠点を回避できるものは回避し、補うことができるものは補っていくことです。