中国映画・ドラマをテキストに! ~ 中国映画ドラマスクリプト

長期戦になる中級で中だるみを避けるためには学習素材、つまるところ学習テキストが単一にならないようにするのが肝要です。

本文、文法解説、新出語彙、練習問題......と続く教科書的なテキストはもちろん重要ですが、コレばかりやっていては誰でも中だるみしてしまうというもの。

このため、中級レベルにおいては学習対象となる題材を適宜変えることで、学習に対する興味と新鮮味を保つことが重要になってきます。

そこで、本項では中級レベルの学習素材としての中国映画・ドラマの活用について考えてみたいと思います。

英語教育では常識

前項で中国語習得における特異な現象として「さまよえる中級」と称される中級立ち止まり現象について言及しましたが、映画やドラマのような映像コンテンツの語学利用は目新しい方法ではなく、かなり以前から知られているものです。

特にハリウッド映画を抱えるなど映画コンテンツが豊富で、市場の大きい英語業界では、スクリーンプレイ社のような英語学習用の映画スクリプトを専門に取り扱う出版社もあるなど、既に市民権を勝ち得た学習法となっています。

中国語についても近年日本で中国映画が広く紹介されるようになり、映像コンテンツを利用した学習法普及の下地が徐々に整いつつあります。

まぁ「徐々に整いつつある」......ということは、残念ながら現在においてはまだまだ普及していない、ということでもあり、現在中国語を学習している中国語学習者にとってはその恩恵に浴する機会はあまりない......ということを意味するのですが。

スズメの涙

私が知る限りにおいてですが、中国映画が初めて中国語テキストの題材として出版されたのは1996年の「さらば、わが愛 覇王別姫―中国語・日本語対訳シナリオ集」に遡ります。

それから10年を経た現在、映画やドラマのスクリプトを直接学習テキストとして編集して出版されたものは......計たった四本に過ぎません。

うち二本は複数の映画からの名セリフ、名シーン、実用表現集で、一本はドラマの名場面集、一本の映画シナリオを完全にテキスト化したのは「さらば、わが愛 覇王別姫―中国語・日本語対訳シナリオ集」だけという有様です。

これら映画シナリオを直接テキスト化したものの他に、映画の原作短編小説にピンインや和訳をつけてテキスト化したものも、わずかではありますが出版されています。

今後中国語需要の増大と中国映画・ドラマの影響拡大にしたがって映画ドラマのシナリオを題材にしたものも増えてくるでしょうが、現在のところ、手持ちの駒はこれだけしかありません。

現在市販されている中国映画・ドラマシナリオ及び関連のテキストを集めてみましたのでご参照ください。

中国映画・ドラマシナリオ教材

映画ドラマを利用した学習法あれこれ

映画ドラマを利用した中国語学習法には「1.リスニング」「2.スクリプトのリーディング」「3.スクリプトの音読」「4.シャドーイング」などがあります。

このうち1のリスニングは分かりやすいですね。ただ、映画のリスニングは上級者でも結構難しいものなので、中級の特に初期段階では手も足も出ないと思います。

リスニング力が十分に上がるまでは映像を見ながら字幕と照らし合わせて、気楽に聞き流すつもりで取り組んだ方がいいかもしれません。

2のスクリプトのリーディングは映画ドラマを利用した学習法としてはあまり注目されない学習方法ですが、中国語力が低い段階からでも映画やドラマをテキストとして利用できるという利点があります。

映画ドラマは会話文が主体ですから、短文が中心で文法的にも複雑ではなく、語彙も口語語彙が大多数を占めているので、中国語力が高くなくても十分対応できるのです。

ただ、中国語の場合英語のようにスクリプト集が山ほど出版されているわけではないので、現状あまり現実的な方法でないことも確かです。

字幕を一時停止しながら書き写していく、という手もあることにはあります。ただ、こうなるとリーディングというより書写学習になってしまいますが。

また、漢字に精通している日本人にとって、中国語のリーディングは英語のそれと比べ敷居も低いので、映画スクリプトをリーディング素材として利用するうまみは英語ほど大きくありません。

3.のスクリプトの音読はおすすめの学習方法です。中級レベルにおいても音読学習法は十分効果を発揮しますし、内容も会話文中心ですから、そのまま覚えたものを実際の会話で使うことができます。

中国語力が高くなれば、テキストがなくても字幕を読み上げていくことで音読をすることだって可能ですから、中級の後期ぐらいのレベルだったらテキストが制約になることはないでしょう。

ただ、モノによっては字幕がいい加減なケースも散見されますので、そのあたりは注意が必要です。

4.のシャドーイングは中級レベルの学習者にはちょっと難しいかもしれません。もちろん内容にもよりますが、ドラマだったら中級後期レベルから、映画だったら上級レベルを待って始めるのが賢明でしょう。

また、シャドーイングはテキストなしでも可能なので、出版されているシナリオテキストの少ない中国語でも影響を受けることなく学習を進めることができます。ストーリーの人物になりきって中国語をシャドーイングしていく......これこそ上級者の特権であり、これまでの苦学の報酬でもあります。

早くこのレベルに達して映画ドラマ学習三昧の日々を送りましょう。