中国語の「楽習」といえば外せないのが映画やドラマを使用した学習法。ビデオテープの普及と共に生まれた学習法で、教材が充実している英語では英語学習者向け対訳・解説付き映画スクリプトが多数出版されています。
以前「中国語学習法」で中国語多聴学習の視点から映画・ドラマを使用した学習法について考えてみましたが、ここでは中国語の「楽習」という視点から中国映画・ドラマを使用した学習法について今一度考えてみたいと思います。
前項同様中国映画・ドラマを使用した学習法の利点と欠点を列挙することから実践上の注意点を導き出してみましょう。まずは利点から。
1.「楽」
これは言うまでもないかもしれませんね。歌と同様にテキストを使用した学習法に比べ「楽」なこと。
「楽」は「楽しい」と「ラク」の二つに通じます。お気に入りの映画やドラマを見ることは楽しいことであり且つストレスもかかりません。楽しくまたストレスがかからないのですから学習効果は当然ながら高くなります。
2.復習が比較的容易
復習は語学の基本ですが、退屈な分おそろかになりがちな項目でもあります。
その点お気に入りの映画やドラマなら繰り返し見るのもそれほど苦ではありません。
3.映像あり
映像がある分多少リスニング力が低くても内容を理解するのはそれほど難しいことではありません。
音声だけの学習教材の場合内容がまったく理解できず続かない、という学習者にとって映画・ドラマのような映像付きの教材はストレス低減効果が高いため、より継続しやすくなります。
4.豊富な会話表現
リーディング力やライティング力に富む一方で、会話表現力に乏しい日本人中国語学習者にとって会話表現が豊富な映画やドラマは格好の会話テキストです。
いわゆる学習テキストのような「つまらない」会話表現ばかりではなく、生き生きとした会話表現に富む映画・ドラマは学習者をして勉強している気にさせません。
しかも練りこまれたストーリーでおまけに映像付きですから、記憶定着率も通常のテキストに比べ格段に高くなります。
以上、利用価値は非常に高いのですが、もちろん欠点もあります。以下に列挙してみましょう。
1.「標準」から外れた発音
生素材ですから通常の学習テキストに比べ速度も速く、はっきりと発音されていないもの、多少なまりの入っているもの等も少なくありません。
2.イレギュラーな表現
映画にせよドラマにせよ、セリフはもともと中国語学習用に製作されているわけではないため、文法的にイレギュラーなものが含まれていることもあります。
3.乏しい対訳スクリプト
中国語学習用映画対訳スクリプトは数的に非常に乏しいものがあります。
中国語で映画・ドラマを学習素材として使用する場合、字幕に頼る他ありません。手間もかかりますし、解説がないので中級者にはちょっと難しいかもしれません。
以上、ざっとではありますが、利点と欠点をそれぞれ挙げてみました。ここから映画・ドラマを利用した中国語楽習法を実践する上での注意点を導き出してみます。
1.上級者向け
生の素材で、しかも対訳スクリプトもないとなるとレベルの低い学習者には向きません。
映画・ドラマをメインテキストとして学習するのは中級上レベルに到達するのを待つのがいいでしょう。
2.補助教材としての利用
初中級レベルの場合、理解度が低くても気にならないという学習者は多聴学習の一環として映画・ドラマを聴き流すのもアリです。
気になった表現があったらメモして後で調べてみましょう。
まとめ
基本的に上級者向けの学習法ですが、用法を限定すれば初中級者でも使用できる優れた学習素材です。
以前と比べ中国映画・ドラマが身近になっていますので、積極的に利用していきたいものです。
最後に、現在のところ中国語学習用テキストとして出版されている唯一の映画スクリプトをご紹介しておきます。学習に映画を利用してみたいと考えている方は、まずこれから試してみてください。