歌を利用した外国語学習は古くから確立している学習法で、その有用性については既に広く認知されており、特に目新しいものではありません。
中国語でも『中国語で歌おう!―カラオケで学ぶ中国語』のような中国語の歌で中国語を学ぶよう設計された中国語学習書が出版されており、すでに実践されている学習者も少なくないと思います。
そこで、本項では歌を利用した学習法の利点と欠点を列挙することから歌を利用した効果的な中国語楽習法について考えてみたいと思います。
まずは利点から。
1.「楽」
まず第一にテキストを使用した学習法に比べ「楽」なこと。
「楽」は「楽しい」と「ラク」の二つに通じます。好きな歌を聴くことは楽しいことであり且つストレスもかかりません。
楽しくまたストレスがかからないのですから学習効果は当然ながら高くなります。
2.復習が容易
復習は語学の基本ですが、退屈な分おそろかになりがちな項目でもあります。
その点歌は基本的に何度も繰り返し聴くものなので、自然と復習できてしまうのは大きな利点です。
3.適度な長さ
歌詞はテキストとして使用するのにちょうどいい長さです。
おまけに繰り返し聴くのですから、特に初級レベルで高い効果を発揮するテキスト丸暗記にはもってこいです。
4.修辞的に秀逸
歌詞の中には修辞的に優れているものも少なくありません。
こうやって見てくるといいこと尽くめですが、残念ながら欠点も少なくありません。以下に欠点を列挙してみます。
1.声調の崩れ
中国語の文字である漢字は一文字一文字固有の抑揚(声調)を有しています。一方で曲にもそれそのに抑揚がありますので、両者が衝突した場合程度の差こそあれ声調に変化が生まれ、本来の声調から外れる場合があります。
発音及び声調は中国語、特に初級レベルでは重要な項目です。発音声調を固めるのが最重要任務であるこの時期に崩れた声調を大量に聴き続けるのは好ましいことではありません。
2.不正確な文法
歌詞は修辞性を重視し、且つ曲に乗せる必要があるので、標準的な文法法則から外れている表現が一部に見受けられます。
文法を学習し終えた中上級者が修辞法としてこれらの表現を学ぶのはいいのですが、基礎固めの段階にある初級者にとっては害の方が大きいかもしれません。
3.欠ける論理性
歌詞は詩に属するものですから、文章そのものの論理性は重要視されないため、歌詞では中国語の文章構成を学ぶことはできません。
以上、ざっとではありますが、利点と欠点をそれぞれ挙げてみました。ここから歌を利用した中国語楽習法を実践する上での注意点を導き出してみます。
1.初級者には向かない
残念ながら、イレギュラーな要素がここまで多いと基礎固めが重要な初級レベルにある学習者には向きません。
少なくとも発音と文法がしっかりと固まるのを待ってから始めるのが無難でしょう。
2.メインの教材にはできない
イレギュラーな要素が多いのですからメインの教材とするわけにはいきません。
まとめ
ストレスがかからず、楽しく学習できる歌を利用した学習法ですが、欠点も多く抱えているようです。
中国語学習における歌の有用性は肯定できますが、これだけで、という訳にはいかないでしょう。
もっとも楽しいことは重要なことです。また、初級レベルだから歌を聴いてはダメということもありません。興味とレベルに応じて適度に日々の学習の中に織り込んでいけば良いのではないでしょうか。